ジュピター

2022年06月02日 木曜日

ラナ・ウォシャウスキーアンディ・ウォシャウスキー製作・監督・脚本、ミラ・クニス主演の2015年の映画「ジュピターJupiter Ascending)」

アメリカで清掃員として働いているロシア移民のジュピターはお金を得る為に卵子を提供する手術を受けようとすると医師達に拘束され、そこに突如一人の男が現れて医師達を次々と撃ち殺して行った。
医師達は異星人の正体を現し、ジュピターはその男に拉致された。
その男ケイン・ワイズは、ジュピターは全宇宙を支配している一族から命を狙われており、そのため自分がジュピターを助けに来たと告げた。

Amazon プライムビデオで配信が終わりそうだったので、SFだと思うという位の前知識で見てみたけれど、まあ色々と酷いし、結構序盤から退屈して真面に見てはいなかった。

初めの段階で、貧乏な女の子が実は宇宙の命運を司る人物で、カッコいいマッチョな男性が助けてくれるなんて正にベタベタなヤングアダルト小説っぽくって、てっきり数巻あるSFのYA小説を映画化した映画か…と思ってしまったので、どういった映画なのかを見ながら調べてみたら、ウォシャウスキー兄弟(当時は姉弟)のオリジナル映画だと知って、悪い意味で驚いた。
ウォシャウスキー兄弟と言えばマトリックスシリーズを作り上げ、おもしろい設定や映像で他の映画やテレビ等でもパロディ化される位の時代の寵児だったのに、それ以降の映画は全然な評価ばかりだったと思うけれど、実際見てみたら理由が分かった。
設定はつまらない。話は様々な部分で説明が足りない独りよがり。構成がつまらないと、酷い出来。

初めから映像でジュピターの両親の出会いやジュピターの誕生を見せて、そこにわざわざナレーションを入れてまで丁寧過ぎる説明をしていて、これが後の何かにとって重要だからかと思ったけれどそうでもなく、ジュピターはたまたま遺伝子が同じというぶっ飛んだ都合のいい理由で話が進むので両親の話は一切関係無いし、母親が他人を信じなくなったからジュピターもそうなのかと思いきや、他人の言っている事を疑う感じでもなく、三兄弟の話にホイホイ乗っちゃうしで、この導入の丁寧過ぎる説明が意味不明。

その後も普通の少女ジュピターが突然宇宙規模の戦いに巻き込まれるという展開なのに、ジュピターの日常を描く前にアブラサクス側の話を見せてしまうので当然こことジュピターが関わって来ると思うのでジュピターの突然の巻き囲まれ感が無い。

それ以降もジュピターの遺伝子がアブラサクス家の母親と全く一緒という馬鹿みたいな理由で狙われるけれど、そもそもジュピターが遺伝子検査を受けたみたいな描写も説明も無いのにアブラサクス側がジュピターを狙っていたりする不思議とか、ジュピターが「陛下(Majesty)」と呼ばれるのに何で自分がそう呼ばれているのかを全く聞かないし、ジュピターは巻き込まれるだけで自分で何かをしないし、ジュピターの遺伝子が母親と全く一緒でも母親ではないんだから王位を継承出来んの?とか、あれだけ科学技術が進んでいるのに遺伝子工学が都合良く遅れていて問題があるとか、まあ脚本の展開上の都合だけのツッコミしかない展開ばかり。

全宇宙を支配しているアブラサクス三兄弟も、これだけの絶対的長期的王権を維持しているのに地球一つで崩壊する可能性があるとかよく分からないし、そもそもどういった仕組みでこの権力構造になっているのかも分からない適当さだし。

一番酷いのは、アブラサクス三兄弟の一人一人にジュピターが呼ばれて危機が起こるのでチャニング・テイタムが空を走りながら助けに来てくれるという展開を三度もやってしまった事。
ジュピターも毎度毎度相手に乗っかって追い詰めらるし、何で同じ事を三度も見せられなくてはいけないんだ…。

結局最後はアブラサクス三兄弟の長男は死亡したと思われるけれど、他の二人は生きているんじゃないの?で、問題は全て解決してジュピターも地球も大丈夫なの?かがよく分からないまま。
もしかしてこれって、続編やるつもりでぶん投げたままなのかしらん?

そう言えば、ウォシャウスキー兄弟の映画ってマトリックスシリーズもそうだったけれど、強大な力と科学力を持った相手が地球人を管理して育てて、そこからエネルギー等の何かを得るという非常に回りくどい面倒臭い事をしているけれど、これ好き過ぎない?

あと、見ていてもセットや衣装とかはスター・ウォーズシリーズとか「デューン 砂の惑星」とかの影響しか感じず、寧ろそれが悪い方にしか転ばなかった「フィフス・エレメント」っぽいし、話はYA小説だしで、このオリジナルの無さ加減は何なのだろう?

この映画の一番の見所は直ぐ死ぬ俳優でお馴染みショーン・ビーンが最後まで死なずにいる事。
役柄的に死にそう、死ぬだろうと思ったのに生き残り、これがこの映画の一番の驚き所だった。

この映画、ウォシャウスキー姉弟が自分達がやりたい様にやった結果、自分達が分かっているだけで見てる方は「これ何?」「理由は?」が多く、展開も登場人物達も濃そうな感じはするけれど印象に残らずさっさと次に行ってしまい、連続ドラマかシリーズモノの映画の総集編を見せられている様な酷い映画だった。

★★★★★

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