ダイバージェント

2022年04月17日 日曜日

ニール・バーガー監督、シェイリーン・ウッドリー主演の2014年のアメリカ映画「ダイバージェント(Divergent)」
ヴェロニカ・ロスのヤングアダルト小説「ダイバージェント 異端者」が原作で、ヴェロニカ・ロスは脚本にも入っている。

世界が戦争で崩壊し、生き残った人々はシカゴの町で各共同体に分かれて暮らしていた。
人々への施しと政治を行う「無欲」。
科学や知識を司る「博学」。
治安維持を行う「勇敢」。
司法を司る「高潔」。
農業を行う「平和」の派閥によって調和が取られて平和が続いていた。
「無欲」のベアトリス・プライアーはこれからの派閥選びの為に適性検査を受けると、どの派閥にも属さない異端者(ダイバージェント)だと診断された。
ベアトリス・プライアーは選択の儀式で「勇敢」を選び、「勇敢」の派閥として訓練を受けるが、異端者だと他人に知られると殺されると知ってしまった。

わたしは粗筋をざっと見てみて、崩壊後の立て直しの世界で決まった生き方に決められる位の前知識で見たけれど、内容が正にヤングアダルト小説でティーンの少女が見ればおもしろいのかもしれないけれど、流石にわたしみたいなおっさんには大分きつかったし、後半のご都合主義の駆け足展開の酷さもあって終始つまらなかった。

前半は要は「学生を卒業して、不自由は無いけれど刺激が足りないので警察や軍隊に入ったら嫌な仲間や励ましてくれる仲間もいて、何故か落ちこぼれな私に目をかけてくれるカッコいい教官がいて、しかも私は皆と違う特別な存在!」って、如何にもYAで、中高大生女子ならすんなり入るかもしれないけれど、おっさんにしたら全く共感性も無く、延々とゲボ吐きそうな話を見せられて非常にきつかった。
それに、ここ盛り上がる場面ですよ!という所で曲が盛り上がる演出も小寒かったし。

それでもまだ前半はじっくりと主人公の生活を描いていて何を見せたいのかがはっきりしていたけれど、後半になると話を時間内に消化する為だけの様な都合の良過ぎる持って行き方で非常に安っぽい。
行き成り謎の薬品で「勇敢」の人達を全員洗脳して自由自在に操って「無欲」を全制圧。
ただ教官の洗脳は愛の力?で解除。
首謀人を洗脳して命令したら「勇敢」の人達の洗脳全員解除。
主人公の兄も洗脳されていたらしいけれど、台詞だけで「洗脳が解けた!」で主人公と共に戦い出す。
主人公の危機には突如母親が現れて、突如元々「勇敢」だったと言い出し、ここら辺の経緯は全く描かない等々、ずっとなんじゃこりゃ?な展開が素早く過ぎ去って行く。
前半のダラダラ感に比べたら、この駆け足感と言うよりも色んな物のすっ飛ばし感が酷い。

この設定自体も初めはおもしろいかも?と思ったけれど「高潔」と「平和」はほぼ登場せず、五派閥に分けた意味が分からない。
しかも無派閥も存在しており、五派閥からはぶれた人はこの無派閥に落ちる様な描き方なので、この無派閥が存在しているなら不安定要素を常に抱え込んでいるのにこれまで何も起きていないのが不思議。
ただ上手いと思ったのは「勇敢」の試験に落ちた人が無派閥に落ち、それによって必ず無派閥が一定数存在し続けるので「勇敢」は無派閥を監視するという仕事が維持出来ているというのは上手い仕組み。
でも、それだと無派閥の人は「勇敢」に反感や復讐を抱きそうなのに無派閥の人は特に何もしない。
無派閥の人は何か有り気な感じで描くのに本当に何も無い。
この無派閥の存在を入れる意味が不明。

それに、派閥を自分の意思で選べたら意味無くない?とも思った。
生まれ育った派閥から新たな派閥に行けば考え方も違うし、新派閥に合わない人も結構出て来て、元の派閥に戻れないなら無派閥が結構な割合で出て来るはずだから、そもそもの仕組みとして破綻していない?

それにこの映画の軸ともなっている「異端者」というのがよく分からなかった。
台詞で「異端者」とは出て来るけれど、実際何が異端なのかを映像では見せないので「異端者」という存在が上滑りしている。
全派閥に適応出来る素質があるっぽいけれど、だったら各派閥で上手くやっていけるじゃんだし、生まれ育った派閥から新派閥にやって来た人は考え方も行動も違うから皆「異端者」じゃないの?と思ったら何が「異端」なのかが分からなくなっていた。

わたしの見所だったのは役者。
アシュレイ・ジャッドマギー・Qメキ・ファイファーとかのテレビドラマで見た中堅俳優が出ていた。

この映画、完全にティーンの女子向けな話なのでわたしのようなおっさんには全く響かず。
他の部分でも唐突な都合の良い展開に、説明省略で何それ?な事が多く、様々な要素があるのに触れもしないままで終わると言う非常に雑多に色んなモノを放り込んだ感ばかりで、まあつまらなかった。
調べてみたら、元々原作が三部作で、映画も三作のシリーズだけれど映画の最終作は本来は二部作で「ダイバージェントFINAL(The Divergent Series: Allegiant)」の後に「The Divergent Series: Ascendant」が作られるはずだったのが、「ダイバージェントFINAL」が派手にコケてしまったので、本当の最終作をテレビシリーズにしようとしたらテレビなら出ないと言う事でシェイリーン・ウッドリーが降板して、結局テレビシリーズも企画倒れとなったらしい。
わたしは何時もはシリーズ映画を一作目を見たら謎の義務感に駆られて続編も見て来たけれど、このシリーズは一作目がこれで、最終的に打ち切りとなると流石に続編は見るのはきつ過ぎるので、これにてこのシリーズは終了。

☆★★★★

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