ブラックホーク・ダウン

2015年08月01日 土曜日

リドリー・スコット製作・監督、ジョシュ・ハートネット主演の2001年の映画「ブラックホーク・ダウン(Black Hawk Down)」。
1993年に実際に起こった「モガディシュの戦闘」を基にしたマーク・ボウデンのノンフィクション小説「ブラックホーク・ダウン アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録」を映画化。マーク・ボウデンも脚本に参加。

ソマリア内戦が続く中、戦争難民の飢餓に対して国際連合は食糧援助を行なっていたがモハメッド・アイディード将軍派が食料を奪い利用していた。
1993年、アメリカはモガディシュ市内でアイディード将軍の副官二名を捕える為に部隊を派遣した。作戦は30分程で終え、撤退する予定だったが、アメリカ軍のヘリコプターのブラックホークが撃ち落とされ、アイディード将軍派の武装した民兵に囲まれる中、地上部隊は救出の為に墜落現場に急行し、長時間に渡る市街地戦が行われた。

この映画、以前にも見たけれど、やっぱり凄い。これが実際に起こった戦闘だという事も、それをこれだけの映画にした事も凄い。
話はアメリカ軍から見た「モガディシュの戦闘」を描いているので、どうしてもアイディード将軍派の兵士がワラワラ湧いて来るゾンビ映画的、ビデオゲーム的な部分もあるけれど、戦争に対する姿勢だったり、批判的な部分を余り見せずに起こった戦闘を描いて、その中から見た人に何かを思わせる作り。大局からの戦争映画ではなく、ある一つの戦闘や一人一人の兵士からの戦争映画で、戦争映画として非常に素晴らしい均衡感覚。

何より素晴らしいのは、映画としての作り。
序盤30分程でおかれた現状をサッと描き、ここでこれから起こる戦闘への緊張を高めつつ、ちゃんと兵士達の普段の顔を見せて一人一人の役を立たせている。まだ穏やかな部隊での日常から作戦命令が下り、出撃して行き、統制が取れない泥沼の戦闘へと入って行までをじっくりと描き、ここの持って行き方の緊張感や緊迫感は半端無い。
戦闘が始まってからも常に緊張は続き、それも混乱する地上歩兵部隊は分断され、車両部隊は空中からの指令に右往左往し攻撃され、ヘリコプター部隊も効果的な攻撃が加えらず墜落したり、作戦本部は状況は掴めているけれど効果的な作戦が出せない等、幾筋もの話の軸が展開され、この単調にならない様な見せ方も工夫があるし、特にそれをきちんと見せながら緊迫感を出している編集が抜群に上手い。次々と見せる部隊が変わって行くので、部隊によっての緊張と緩和の取り方が上手く、緊張から解放されて一息ついたと思ったらまた緊迫しての連続で、二時間半近くもある長尺にも関わらず、一切ダレる事無く見せ切ってしまう。この年のアカデミー編集賞を受賞するのも、そりゃそうだ。
映像も結構CGを使ってはいる様だけれど、それでもCGという事がほとんど気にならない使い方で、下手に派手な場面やカメラの動きで見せようとはしていないので、何時の間にか見ているこちらが戦場に入ってしまったかの様な没入感がある。ただ、登場人物達はヘルメットを被り、常に動き回っているので、途中で今映っている人が誰なのかが分かり辛くなってしまうという問題点はある。

主役のジョシュ・ハートネットは、まだ若い軍曹で不安のある中、急に部隊を率いる事となる役にぴったり。感じている恐怖と責任感の表情は、見ていてもまさにな役に見えて来る。
エリック・バナウィリアム・フィクトナーとかは、ベテランで落ち着いた役だったり、ユアン・マクレガーは今まで実戦に出た事無いのに出た役とか、各人の役得的な部分はあるにしろ、個性が出まくって更に人物が際立つ。
その中でもトム・サイズモアが演じた車輌部隊の指揮官の全く動じない役に笑ってしまった。他の兵士が遮蔽物に隠れて銃弾を避けているのに、その直ぐ側で直立不動で立ったまま隠れている兵士に話しかけたりと、落ち着き過ぎと言うよりもほぼ無敵の超人。一回首元撃たれているにも関わらず、その立ち振る舞いって何なんだ?コメディー・リリーフって事?

あと、この舞台班や効果班も素晴らしい。野外セットや壊れた家等、何が作り物で本当の町並みはどれなのか分からない位だし、これだけバンバン銃撃や爆破が繰り返され、現場での撮影も相当大変だったと思うけれど、撮影までの準備は相当に凝って時間をかけてやっていると思うと、果てしないよなぁ。

この映画、序盤30分程で徐々に緊張を盛り上げて、残りの二時間近くをその緊張感を継続させたままで突っ走り、見ている方は全く集中力が途切れないまま、あっという間で、見終わると「凄い映画を見たもんだ…。」という満足感と凄い疲労感で一杯になるだけの非常に良く出来た、見さす映画。
戦争映画なのでそこの部分で見るけれど、リドリー・スコットの映像や詰めた展開や編集の上手さも際立つ凄い映画。

☆☆☆☆☆

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