暴走特急 シベリアン・エクスプレス
2013年10月07日 月曜日ブラッド・アンダーソン監督、エミリー・モーティマー主演の2008年の映画「暴走特急 シベリアン・エクスプレス(TRANSSIBERIAN)」。イギリス・スペイン・ドイツ・リトアニアの共同制作。
中国での教会のボランティア活動を終え、シベリア横断鉄道でモスクワへ向かったアメリカ人夫婦。怪しげな男女二人組と同室になり、途中の駅でその同室の男と降りた旦那一人だけが列車に乗り込んでいなかった。
「暴走特急 シベリアン・エクスプレス」という酷い題名で、どうしてもスティーブン・セガール的な、それ以下のC級アクション映画だと思ってしまうけれど、全然方向性の違うじっくり描いたサスペンス映画。邦題はアルバトロスフィルムが勝手に付けた模様。やっぱり酷い仕事しかしない。ちなみにこの映画では列車は暴走しない。
前半は事件らしい事も無く、シベリアへの鉄道の旅と、エミリー・モーティマーとウディ・ハレルソンの微妙な夫婦関係、謎の同室の二人組を見るエミリー・モーティマーという、ロードムービー的にまったりと特に何も起こらない展開。中盤で、夫婦生活では旦那が乗って来ないから若い同室の男性と関係を持とうとしてからの巻き込まれ型のサスペンスへとなって行く。
サスペンスとして上手いのは、ちゃんと前振りが入っている所。エミリー・モーティマーがやたらと怖がるのは、自分が殺人を犯したのではないかという部分もあるけれど、新品のパスポートは偽造し易いとか、ロシアの警察は容赦無いとか、ちゃんと不安になる要素を前振りとして入れている。後から見ると「成程。きっちりしてるなぁ。」と思える様に脚本が出来ている。エミリー・モーティマーは旦那に対する負い目からと自分の恥を隠そうと嘘を付き続け、主人公としては決して良い人ではないので共感し難いというのもおもしろい所。ただ、旦那は巻き込まれただけだし、愛している奥さんには裏切られているだけで、可哀そうになって来る。
監督のブラッド・アンダーソンは、映画「マシニスト」で一つ一つの物や場面に意味を持たせた非常に上手い作りと構成をする監督で、この映画でも意味有り気なカットや演出を付けてはいるけれど、それが後々に響く様な事も無く、意味有り気以上になってないのは演出よりも脚本の問題か。そのせいで全体的に物凄く勿体無い出来に感じてしまう。
ブラッド・アンダーソンって映画も撮りつつ、「フリンジ」とかテレビドラマの監督をしたりしているという一風変わった人。何シーズンもあるドラマでも1・2話だけの監督とかは、一体何なのだろうか?
この映画、サスペンスとしては実に地味。ただ、じっくりと描いたサスペンスで意外とおもしろい。アルバトロスが買い付けてしまった為に、B級路線のパチモン的な変な売り方になってしまったけれど、「マシニスト」のブラッド・アンダーソン監督作品として売り出せば、それなりに良かったのじゃあなかろうか。ただ「マシニスト」的なモノを期待するとガックリは来るだろうけれど、それなりにおもしろく見れる。
☆☆☆★★