クレイマー、クレイマー

2013年06月17日 月曜日

ロバート・ベントン監督・脚本、ダスティン・ホフマンメリル・ストリープ共演の1979年の映画「クレイマー、クレイマー(Kramer vs. Kramer)」。

仕事人間だったダスティン・ホフマンは、突然の妻メリル・ストリープから別れを切り出され、家を出て行かれる。彼は仕事を進めながら小さな息子を育てようと悪戦苦闘する。何とか息子とも上手く行き始めた所にメリル・ストリープが現れ、どちらが息子を育てるかを裁判で争う事になる。

仕事から家族へ、男性の子育て、子供の養育権を巡る裁判、両親の離婚で振り回される子供という問題が出て来た如何にも1970~1980年代のアメリカの家庭事情を描いた映画。
話的には、男親一人で小さな子供を育てる所よりも、それからの方が主題。昔から「クレイマー、クレイマー」という題名だと、文句を言う方のclaimerだと思って、企業に対する文句に次ぐ文句をどう対処するかのコメディかと思ってしまう。原題だと「Kramer vs. Kramer」で、映画の軸部分もそこ。奥さんとの争いに加え、前半の子育てで悪戦苦闘する部分も「Kramer vs. Kramer」。
ただ、その話の導入として一番重要な前半分、上手く行かない所から徐々に上手く行き始める部分の描写が多くないので、唐突な感じがする。どうやってダスティン・ホフマンが子育てや家事に慣れて行ったのか、仕事で大失敗をしたはずなのに、仕事を減らされたのか、自分で制御して減らしたのかとかが描かれず、親子関係や仕事も結構急に上手く行っている感じなので違和感を感じた。行き成り奥さんが出て行って八ヶ月後になっていたりするし。もうちょっと、この過程が欲しかった。
後半の裁判でお互いが抱えていた心情がやっと吐露出来る場面は、非常に切ない。もしかしたら、それでも上手く親子三人で暮らして行けていたかもしれないと想像すると、非常に切ない。
この場面は、この映画でアカデミー賞の主演男優賞と助演女優賞を取ったダスティン・ホフマンとメリル・ストリープの演技の見せ場でもある。お互い哀しい顔を見せながらも裁判に対する意気込みを見せる顔を覗かせ、しかも裁判が進展しながら思い悩む顔を見せて、まあこの二人の表情が良い事。息子役のジャスティン・ヘンリーも相当演技していて、上手い事演技しているのでちょっと笑ってしまう。

この映画で興味深いのは、ダスティン・ホフマンとメリル・ストリープの描かれ方。ダスティン・ホフマンは結構短気で、家庭や子供を顧みなかったので妻に出て行かれ、息子の子育てを通じて成長して行くという王道な人物ではあるのに、メリル・ストリープは終始自分勝手。それまで夫に何も言えなかったという事はあるけれど、行き成り息子を置いて出て行って戻って来ない。ダスティン・ホフマンが「自分が悪い」と息子に言ったので、そうなのか…と思っていると、行き成り現れ親権を巡って裁判。判決が出たのに「やっぱり、私では駄目」と言って諦めてしまう。ダスティン・ホフマンが息子に「ママとは結婚しない!」と言ったのもちょっと分かってしまう。

この映画で一番気になるのは、ダスティン・ホフマンの部屋の玄関に置いてあるサボテン。丁度玄関での場面になると玄関脇の鏡が映り、そこにサボテンが映るのだけれど、サボテンが丸いので人の頭に見えて、何度も映るので誰もいないのに人が映ったと思えてドキッとしてしまう。
そして一番謎なのが、ダスティン・ホフマンの再就職が決まり、パーティーをしていた見知らぬ女性に思いっ切りキスしたのに女性は嫌がりもせず結構な無反応な事。ダスティン・ホフマンの反応はやり過ぎだけれど分からなくもないのに、この女性の反応が全くの不思議。

この映画は、男性監督が男性を主人公に、彼に思い入れをするように撮った映画のなので、メリル・ストリープのいい加減さが出てしまい、彼女をもうちょっと真面な人にすればもっと成程と思える映画になったのだろうけれど、男性、特に子持ちの男性ならぐっと来るのか来ないのかどうなのか分からないけれど、中々おもしろく見れた映画。

☆☆☆★★

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