ロッキー・ザ・ファイナル
2012年08月20日 月曜日1990年の「ロッキー5/最後のドラマ」で終りだったはずの「ロッキー」シリーズが、何故か16年後の2006年に更に続編が作られ、その「ロッキー・ザ・ファイナル(Rocky Balboa)」。
これまでのシリーズ通り、ボクシングからは身を引いたはずのロッキーが、やっぱりボクシングに入れ込んで試合をする。
ただ、これまでと違うのは、ロッキーは完全にボクシングを止め、自分のレストランを開き、10年以上全く別の人生を歩いていた事。でも、前作の五作目から続けて見ると、引退するつもりで結局試合をする今までと大して変わらない展開にしか思えないけれど。
その展開も今まで通り、ロッキーの日常が延々と描かれ、大して見栄えは変わらない。悩み事と言えば息子とあんまり上手く行っていない事位で、しかもその話も少しで、大半はどうでもいい日常が続き、それが効果的に繋がって行くかと言うとそうでも無く。
悩みや揉め事は、毎度の如くお互いの正面向かった言い合いで、相手が文句言うけれどロッキーが説教すると相手は納得して上手く行くという、何度も見た繰り返し。この同じ展開もういい加減飽きた。このシリーズ全体を通して、ドラマ部分が薄く、表面を撫ぜた位であっさり解決、その後もどうなったかはあんまり描かず結構投げっ放し感のある展開で、脚本もずっとシルヴェスター・スタローンが書いているけれど、一作目で全てを使い果たし、後は使い回ししていたとしか思えない。
このシリーズ話を盛り上げる為だったら簡単にレギュラー陣を殺してしまうけれど、今回はついにエイドリアンが。シリーズを続けて見てしまうと、単にエイドリアンのタリア・シャイアと揉めたのかなとしか思わず、話的にも、ロッキーシリーズ毎度の「前作で全て上手く行き、丸く収まったと思ったら、次作ではやっぱり揉め事が起こる」為の設定にしか思えなくなって来た。
そして、「ロッキー」シリーズの話の中心であるボクシングは、まず相手が絶対的強さで勝ち続けているのに何故か人気が無いとか説得力が無い所から始まり、人気を得る為に過去の人である、もう50代のロッキーと試合させるなんて無茶な展開。そのシルヴェスター・スタローンは実際は60歳なのに、今まで以上のムッキムキの筋肉とかやり過ぎで、シルヴェスター・スタローンの変形している様な顔と並び怖い。しかも、これまで20年近くボクシングから遠ざかっていた50代の人間が、何でか現役王者と互角の戦いをするという馬鹿馬鹿しさ。流石にKO勝ちしてしまうとやり過ぎだと思ったかの、判定になるけれども、それでもほぼ互角なんて白けさせる。
試合の会場は、実際の試合中継で行われる試合の前に撮影しているから、雰囲気は当然あるけれど、ロッキーのボクシングの酷さはこれまで通り変わらない。ノーガードで正面から打たれっ放し。ヘビー級で50過ぎなのに、そんだけ打たれても倒れない。最早ドリフの切ってもなかなか死なない時代劇コント。パンチも大振りで、ジャブだの何だの小賢しい事はせず、ただ力一杯殴り続けるだけ。
相手のメイソン・ディクソン役のアントニオ・ターバーは、実際のプロボクサーで元々ライトヘビー級だったけれど、この映画用にヘビー級まで体重を増やしたからか、体が結構緩い感じで絞り切れていないし。
笑ってしまったのは、途中に出て来るロッキーのボクシングをCGで再現した場面。これまでのノーガードで正面からパンチを受けまくるという酷いボクシングを忠実に再現していた。自分自身でこれまでのボクシングの酷さをいじるシルヴェスター・スタローンをちょっと見直した。
しかし、今回も監督をしているシルヴェスター・スタローンだけれど、最近流行の手持ちカメラでわざと画面をぶらさせるという映像を頻繁に入れ、これは見難いだけ。それにエンドクレジットの「普通の人があの階段で騒いでる」というのを延々見せる演出は、もう本当にシルヴェスター・スタローンの監督としての才能の無さの象徴の様なモノ。
一番驚いたのは、ロッキーの試合の選手コールが、あのマイケル・バッファー(Michael Buffer)で、お馴染みの「Let’s get ready to rumble!」を行っていた事。この映画一番盛り上がったのは、ここ。
一番問題なのは、やっぱりシルヴェスター・スタローン。試合はすでにしていないはずなのに、顔がボッコボコ。まあ、整形の失敗みたいな顔は過去の試合の壮絶さを物語ると言う事なのか。それでも彼の顔の違和感はずっと感じ続けてしまうが。
ポーリー役のバート・ヤングは、このシリーズ皆勤だけれど、だからこそ歳を取った事、時間が進んだ事をはっきり見せる。もうおじいさんで、ヨボヨボ。
ロッキーと言うか、この映画の当時頃の至ってさっぱりなシルヴェスター・スタローンの再起の映画として、また「ロッキー」の頃の隆盛をもう一度という事は良く分かるけれど、やっている事はこれまでのシリーズと大して変わらず。ボクシングの酷さも変わらず、シルヴェスター・スタローンが気持ち良いだけの様な展開も毎度で、このシリーズはシルヴェスター・スタローンのオナニーシリーズ。一作目からしてそうだったけれど大しておもしろくなく、回を重ねる毎に「早く終わっておけば…」とつくづく思うシリーズになり、現在の所最終話の今作も別に作らんでも良かったと思えた。
☆☆★★★