顔のない天使
2012年08月10日 金曜日メル・ギブソンが主演し、更に初めて監督もした映画「顔のない天使(The Man Without a Face)」。
顔に傷を負い、他人を遠ざけて暮らすメル・ギブソンと、家庭の中で疎外感を感じている10代前半の少年の交流を描く。
全体的に非常に抑え、大人し目で派手さは無いものの、しっとりと教師と教え子の友情を見せる。その分、ガッツリと来る話でもないという事もある。王道な、心を閉ざし奇妙に映る人に近づき、話をして行く内に徐々にお互いを理解し始めるが、そこへどうしようもない問題が出てしまい…と、意外性はそれ程無く、描かれている事も実に王道の友情なので、良い話ではあるのだけれど、それ程響かなくもある。メル・ギブソンがアクションスターから演技派へ、何より初監督作という事が大きいのか、非常に硬く、優等生的な内容になってしまっているのが少し惜しい所。終盤でメル・ギブソンが単なる傷を背負った良い人では無い事を見せるのは良いのだけれど、それまでがどうも起伏に欠ける感じはある。あと、結局は多数の偏見に飲み込まれてしまう小さな個人の声は哀しい。
それと、試験に出る様な勉強をしている所は余り出て来ず、二人で劇をしたり、山登ったりしていたのに、入試に合格出来たのはどうなのさ、と言うのがあったり、結局家族との喧嘩以後の融和が描かれていないのでどうなったの?等、描く部分が足りない様にも思えた。
今ならコミックス読んでるのは20過ぎのナードになってしまうけれど、この当時の子供らしく結構コミックスを読んでいる。「Thor #144(1967年)」のを持っていたり、「バットマン」を読んでいたり、シェイクスピアにはまったら「クラシックス・イラストレイテッド」のマクベスを読んでみたり。ただ字幕が、「ツー・フェイス」とか「ゴッタム・シティ」になっていたりしたのには、ちょっと笑ってしまった。
メル・ギブソンは監督もしているからか、脇役。人物的にも抑えた、大人し目の人なので、アクションモノ等での明るい役から比べると、印象は弱い。「傷が見えなくなる。」と少年に言われたように、段々と傷が見えなくなって来るのは彼の演技もだけれど、そうなると強かった印象が段々と弱くなって行っている訳でもある為か。
この少年どこかで見た事あるなと思ったら、「ターミネーター3」でジョン・コナーを演じていたニック・スタールだった。ニック・スタールも、エドワード・ファーロングと同じ様に、ジョン・コナーの呪いとも言えるその後の落ちっぷりと、子役の時の上出来さ。ちゃんと演技し、しっかり表情で見せるのは、役得の部分もあるけれど、流石。
メル・ギブソンが主演だけれど、この映画は少年の目線で描かれ、彼が主役。少年の出会いと理解による、成長譚が爽やか、かつ哀しくも描かれている。だからか、流れて行く様な感じがし、もう少し押しが欲しかった所でもある。
☆☆☆★★