エリザベス

2012年06月04日 月曜日

エリザベス1世の伝記的映画「エリザベス(Elizabeth)」。

エリザベスが女王となり、女王として生きて行く決心をするまでの、45年ある在位の初めの5年位を描いている。
エリザベスは、始めは権力との関わりに関心が無い様な感じなのだけれど、女王になれる様な話を出されると、非常に喜び、野心が見え隠れし、見た目とは違う怖さを秘めている。そして、女王になれば「私の国民」と言い、身近にいる誰も信じなくなり始め、まるで初めに迫害された前女王の様な恐怖を感じる人物に変貌して行く。そこは、権力を持つと誰もが同じになってしまう皮肉を描いている。ただ、行き成り女王然として独断的になり、それまでの過程が省かれ過ぎで、いまいち分かり難いが。それに、心配や不安の時はとにかく涙目、決意がある時は無表情と、非常に分かり易くなっている。
カトリックとプロテスタントの争いも一つの主題として出て来るけれど、この争いもエリザベス自身の王位継承がそうだった様に、結局は本家と分家の権力争い、意地の張り合いで、権力欲の渇望が無かったり、そこに共感出来ないと、「この人達、何やってんだろう…?」としか思わなく、「ふ~ん…。」で済んでしまう。
展開としては、それまで権力争いでずっとどうしようかのこう着状態だったのに、終盤で一気に皆殺しであっさり解決してしまい、だったら初めからそうしとけよな台無し感はある。
権力と宗教と恋愛を混ぜ込んではいるけれど、全体的に見た目は濃い目なのに、結構薄味。世界がどうのこうのと言うけれど、西ヨーロッパというそんなに大きくない地域で、しかも映る場所や、話が展開されるのが王宮の中がほとんどなので、言う割に見た目はちんまく、壮大さは無い。

ケイト・ブランシェットはこの映画の翌年のピープル誌の「最も美しい50人」の一人に選ばれたそうだけれど、この映画を見ている限りは別に美しくは無い。始めは冴えない田舎娘が、恐ろしい、近づき難い女王になって行く変化は見事。その怖さの美しさはあるのかもしれないが。
ジェフリー・ラッシュリチャード・アッテンボローヴァンサン・カッセルダニエル・クレイグ、「ドクター・フー」の9代目ドクターでお馴染みクリストファー・エクルストン等多彩な役者が出ているのだけれど、どうも誰も目立たない感が強く、本当に脇役。更にケイト・ブランシェットでさえ、どうも印象が弱い。

やっぱり何処でも昔の服装は珍奇。特に、この時代の男性の提灯短パンは、どんなに渋く、怖い顔をした策士や暗殺者でも、笑ってしまう滑稽さ。最後の女王として生きて行く事を決意したエリザベスの化粧と格好はピエロにしか見えず、薄ら笑ってしまう。それに、この手の西欧貴族の恋愛時代劇では必ずと言って良い程長めのダンス場面があるけれど、その場面は一番盛り下がる興味の無さだし、間抜けで馬鹿みたい。

この映画が少し変わっていたのは、始まりの字幕での制作者紹介。物語が始まって10分以上経っても画面下に字幕の様に出続けて、物語の映像の方に目が行って、監督や製作の名前も小さく、ひっそりと、地味に出すだけで見逃すだろうし、そこを全然主張しないのは一体何なんなのだろう?

やっぱり、西欧貴族の恋愛時代劇は興味が無い。恋と権力や見場の中で悩む話って、「ふ~ん…。」としか、それも興味の無いながらな「ふ~ん…。」で終わってしまう。この悩みを振り切ったこの後のエリザベスを描いたこの映画の続編「エリザベス:ゴールデン・エイジ」の方が、興味は出て来るかもしれない。けれど、この映画を見た後に続編を見る気になるかと言うと、それは無い。

☆☆★★★

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