導火線 FLASH POINT
2022年08月26日 金曜日ウィルソン・イップ監督、ドニー・イェン製作・主演の2007年の香港映画「導火線 FLASH POINT」
1997年の中国返還前の香港。
マー刑事と相棒ウィルソン刑事は三兄弟の犯罪者を逮捕する為に捜査をしており、ウィルソン刑事は三兄弟の仲間となり潜入捜査をしていた。
警察は三兄弟の長男を逮捕する事は出来たが、ウィルソンが刑事だとバレてしまい、次男と三男は逃げ延びてウィルソンが裁判で証言しない様にウィルソンの彼女を誘拐した。
彼女を救い出す為にウィルソンは敵のアジトへと行くが、マー刑事は裁判が取り下げられて自由となった長男を人質に取ってウィルソンを救い出しに行った。
ドニー・イェンのアクション映画っぽかったので見てみたら、初めの場面でドニー・イェンが総合格闘技的な締め技を見せて、この掴みのアクションのおもしろさで一気に興味を持ったのだけれど、これ以降が退屈する話が延々と続き、最後の最後でやっとドニー・イェンのアクションを出しては来るのにそこまでが持たずで大分いまいち。
ドニー・イェンが主演のはずで、最後もドニー・イェンのアクションを見せまくるのだけれど、話はルイス・クー演じるウィルソン刑事の話ばかりで、この映画のほとんどはウィルソン刑事が主人公の話。
二人の刑事の関係性を見せるにはドニー・イェンとルイス・クーの配分が極端で、序盤から終盤までウィルソン刑事の話なのに初めと終わりの美味しい所だけをドニー・イェンが持って行ってしまう感じで、何を見せたいのかが分からない焦点の当て方。
話自体も潜入捜査をしていた刑事の正体がバレて復讐されるという非常に分かりやすい話なのに、展開がやたらとゆったりして非常にまどろっこしくておもしろくなく、見せ場もほぼ無いままで大分退屈で集中力は切れてしまった。
これだけ話をじっくりと描いているのに話は結構お座なり。
敵の三兄弟はほぼ三兄弟だけでやっていてこじんまりとした犯罪者にしか見えず、結局三兄弟は何をしていて、何をしたいのかがいまいち分からないので悪役として弱い。
ウィルソン刑事が潜入捜査官だとバレてしまうのだけれど、何故バレたのか、次男は何を不審に思って気付いたのかとかは全然描かれない。
マー刑事はやり過ぎな捜査で犯罪者をボコボコにし過ぎて音楽隊に転属になり、そこに母親が会いに来るとかの背景も見せているけれど、終盤でマー刑事が怒って三男を殺してしまうのも初めの設定が無くてもそりゃあ怒るだろ…だし、母親も多分マー刑事の母親と三兄弟の母親の対比を見せたかったのだろうけれど、それがほぼ活きていないとか、脚本がどうにも練られていない感ばかり。
ただ、最後のドニー・イェン対コリン・チョウのアクション場面は見もの。
と言うか、ここまでを早送って、色々あってコリン・チョウが悪い犯罪者でドニー・イェンが良い者の刑事とさえ分れば、このアクション場面だけを見てもいいと思う位。
殴る蹴るはカンフーの土台があるのだろうけれど、そこにマウントポジションから殴りを防御したり、腕ひしぎ十字固めや三角締等の関節技や一本背負い等の投げ技や寝技等色んな格闘技を混ぜたアクションをやっていて、これの見応えは凄い。
最後にこれで映画を一気に爆発させようとする意図は分かるけれど、これまでにほとんどドニー・イェンのアクションが無いのはキツくて、アクションの配分も悪い。
その敵役のコリン・チョウって、マトリックスシリーズでセラフ役だった人か。
あんまりピンと来なかったのは、セラフって終始サングラスを付けていたからなのか。
この映画のコリン・チョウを見ていたら、この人目が小さいなぁ…とは思ったけれど。
あと思ったのが、何故この映画の時代が1997年の中国返還前である必要があったのかと疑問だった。
設定とか展開とか、途中途中で黒色にフェードアウトしたり、音楽の演出とかから勝手に1990年代前後の香港ノワールの雰囲気を出したいからの舞台設定なのかな?とは思った。
この映画、軸となる話で退屈してしまい、ほとんどはドニー・イェンが主人公ではないのに最後にドニー・イェンを見せる為の一番の見せ場を作っているので結局全体的に何だかチグハグな印象になってしまい、話はどうでもいいので最後のドニー・イェンのアクションだけ見てもいいかもしれない映画だった。
☆☆★★★