エリジウム

2021年09月09日 木曜日

ニール・ブロムカンプ製作・監督・脚本、マット・デイモン主演の2013年のアメリカ映画「エリジウムElysium)」

2154年。地球は人口増加や環境汚染によって荒廃しており、一部の富裕層は地球の衛星軌道上に作られたスペース・コロニー「エリジウム」に脱出し、病気や老化の無い満ち足りた生活を送っていた。
ロサンゼルスの工場で働くマックス・ダ・コスタは工場での事故で大量の放射線を浴びて余命五日と宣告されてしまう。
エリジウムに行けば健康な体を取り戻せるので、マックスは闇商人にエリジウムへの非正規脱出を頼むと、闇商人はエリジウムの市民の頭の中にあるアクセス権や財産等のデータを奪い出す事を条件にマックスのエリジウム行きを承諾した。
マックスは工場を経営するジョン・カーライルを標的にするが、ジョン・カーライルはエリジウムをコントロールしているプログラムを設計しており、彼はエリジウムの防衛庁長官ジェシカ・デラコートの政治クーデーターに加わり、エリジウムのプログラムを再起動出来るプログラムを頭に収めていた。
ジョン・カーライルからデータを奪い取ったマックスはエリジウムからの刺客に狙われながらもエリジウムを目指した。

一番の目的はSFだったからで、マット・デイモンも出ているので見てみたけれど、始めはおもしろそうな雰囲気があったのに見ているうちに徐々に典型的なハリウッド映画に収束して行ってしまい、見終わると物足りなさばかりを感じてしまった。

始めの、荒廃した地球の低層の粗末な住宅がびっしりと並んでいる町にドロイドや飛行機が飛んでいる様子は物凄く映画「第9地区」っぽさがあったけれど、近未来荒廃SFとしては良い雰囲気だし、その上空にはまるでビデオゲーム「HALO」の様なコロニーがあり、設定として中々良い感じ。
(後から調べて知ったけれど、監督のニール・ブロムカンプって「第9地区」の監督で、実現しなかった「HALO」の実写映画の監督に採用されたそうだけれど、正にそれらがそのまま)
ただ、後から思うとエリジウムの設定が別に宇宙コロニーである必要性がそれ程でもなく、地球の海上都市とか、隔離地域とかでも良さそうな感じ。
あれだけデカくて目立ち、結構簡単に衛星軌道上まで行ける技術や機器があるのでエリジウムへの憎しみでエリジウムへの攻撃やテロが簡単に行えそうなのに、エリジウム側にはほぼ防衛兵器は無く、地球上からの人力による攻撃で違法船を攻撃したりとか非常に手薄。
宇宙船に鉄屑とか大量に積んで何隻もの宇宙船でエリジウムに攻撃を仕掛けたら、撃ち落されても鉄屑がエリジウムに降り注いで簡単にエリジウムを壊せる様な気がしないでもない。
エリジウム側でも初めの違法移民の船が来た時には迅速にドロイドが動いていたのに、主人公や傭兵がエリジウムで暴れてもドロイドの警備も無いし、そもそもドロイドが全然出て来ないという都合の良さもあって、エリジウムの警備や防備がスッカスカ。

で、話はマット・デイモンが強化外骨格を付けての傭兵との戦いになる辺りからアクション映画になっておもしろくなるのだけれど、結果最後までこの傭兵との戦いだけで終わってしまい、ひとネタで引っ張っている感じが強くて、終盤では「まだやるの?」と感じてしまった。

主人公がずっと付け回して来る敵と最終的に殴り合って勝負をする。
元々気が短いのに文句に耐えかねた手下に黒幕は裏切られて殺されて、あっさりと退場。
主人公が自分の命を失って世界を救う。
等々、終盤の如何にもなハリウッド映画の展開の連続でしょうもなくなってしまい、盛り上がりの尻すぼみが物凄い。

最終的にエリジウムが解放されてめでたしめでたしみたいになっているけれど、どう考えてもエリジウムの医療を世界中に行き渡らせるとしたらエネルギーや資源的に考えて恩恵を受けれない人が続出だし、皆が健康で死ななくなったら地球での食料やエネルギーは絶対に足りなくなるだろうしで地球各地で紛争や戦争で更に荒廃が進むだろうし、エリジウムの人々も自分達の生活を守る為に攻撃に出るだろうしで悲惨な未来しか見えなかったのだけれど。

それにこの映画の設定となっている極端な貧富の差とそれによる待遇の差ってSFで極端に現実の比喩をしているけれど、最後の主人公の行動で世界が救われるって「現実でもそうなるはずだ!」って言いたのかしらん?
単に映画として英雄譚のハッピーエンドにしただけだとは思うけれど、そうだとこの世界の設定が現実の比喩として薄くなるだけだしなぁ。

あと気になったのは、時代が約140年後の結構な未来で、そのまま大気圏外まで行ける飛行機や何でも治せる超技術のカプセルがあるのに、UAVが現在のドローンと変わらずで時代遅れ感というか骨董品感が凄かった。
何でUAVはもっとSFを出さなかったのだろう?

この映画、雰囲気や設定はおもしろいのにそれらを活かしている気が余りせず、終盤に行けば行く程在り来たりなハリウッド映画になってしまって、なんだかなぁ…と勿体なさと残念感ばかりが募った。

☆☆★★★

« | »

Trackback URL

Leave a Reply