ターミネーター

2016年07月15日 金曜日

ジェームズ・キャメロン監督・脚本、リンダ・ハミルトンマイケル・ビーンアーノルド・シュワルツェネッガー出演の1984年のアメリカ・イギリス映画「ターミネーター(The Terminator)」。

普通の女子大生サラ・コナーは自分と同姓同名の人物が次々と何者かによって殺されている事を知る。やがて彼女の下にも謎の男が現れ殺されかけるが、別の謎の男によって助けられる。助けた男は、あれは未来から来た殺戮機械で、機械に支配された未来世界のリーダーの母親となるサラ・コナーを殺しに来たので自分も未来からアメリカとイギリスを助けに来たと言い、彼女を殺戮機械から守ろうとする。

「ターミネーター」と言えば、これまで何度もテレビの地上波で放送され、良く見て来ていたけれど、今改めて見てみても緊迫感と緊張感は高いし、やっぱり最高におもしろい。
ただ、改めて見ると、「サラ・コナーがカイル・リースに助けられターミネーターから逃げ回る」という話だと思っていたけれど、確かにそうではあるけれど実は泣ける恋愛映画でもあった等、思っても見なかった色々な事に気付かされ、更に上手い映画だと感心した。

多分、これまでは何だか分からない内に巻き込まれたサラ・コナーを中心として見ていたはずだと思うけれど、ここはもう分かっている事だし、未来と現在の関係性も分かって見ると、主人公はカイル・リースになって見ていた。
カイル・リースは核戦争によって崩壊し、機械に支配され、ただ生き残る為だけに無限とも思える機械軍団と戦い続けるだけの未来に生まれ、実はその世界でずっとサラ・コナーという伝説的な人の話を聞いており、彼女を尊敬と恋心の混ざった感情で信じて生きて来た中で、自分を育ててくれた尊敬するジョン・コナーの為であり、憧れのサラ・コナーを守る為に戻る事の出来ない過去に戻り、そこでも戦い続け、数時間だけのサラ・コナーとの触れ合いで彼女の為に死んで行く…って、壮絶な恋愛話。
サラ・コナーも始めは普通の人だったのがターミネーターの登場で一変してしまい、自分の事を命を懸けてただ守るカイル・リースに惹かれ、最後は彼の想いと未来を受け止め、まだ生まれぬ自分の子供と生きて行く…って、こちらでも壮絶な恋愛話。だから、最後の場面は号泣。

この主人公二人の話だけでなく、ターミネーターを含めた話の主軸の構成も上手い。
三人の人物のそれぞれの視点で構成され、それが一つに交わるという群像劇的構成になっていて、それぞれの流れで見ても行ける様になっている。
まず、謎の二人の男の登場。片方は無表情で問答無用で殺しまくり、徐々に人間ではない部分を見せ、撃たれても死なず、爆破にも耐え、最後まで追いかけて来る恐怖の対象として抜群に良く出来ている。特に、機械的な所をずっと見せないままで序盤は行き、怪我をしたと思ったら内部の機械が見えて何者かがはっきりと分かり、終盤で爆発に巻き込まれて終わったと思ったら機械の骨格だけで登場し、下半身が無くなってもまだ追い駆けて来る恐怖なんて、見せ方が抜群に上手い。
一方のカイル・リースも始めはサラ・コナーの命を狙っている風から助ける人だと分かり、そこからの真っ直ぐ過ぎて警察に信じてもらえないだろう未来の話を全部話してしまう馬鹿正直さ、真っ直ぐさで突っ走り、見ていて彼の事を徐々に好きになってしまうカッコ良過ぎる役の作り上げが良い。
サラ・コナーも始めは普通の人だったので泣き叫ぶだけだったのが、ターミネーターの存在を見ているので早い段階で現状を理解し、そこから徐々に「ターミネーター2」で見る様な強いサラ・コナーに変わって行く様も上手い。

また、これ以降のシリーズの映画を知っているとおもしろい部分も多い。
この映画でのカイル・リースのカッコ良さったらなく、じゃあ彼が信奉するジョン・コナーって、もっと凄いんだろうな…?とこの映画だけを見ていると思うのに、これ以降に実際に出て来るジョン・コナーのヘタレっぷり、非英雄的な描かれ方を知っていると、よりカイル・リースが一途で「彼こそ英雄」と思えてしまったり。

サラ・コナーが失敗ばかりしているウェイトレスでの場面では、同僚に「100年後には笑い話よ」と言われているんだけれど、これは未来で英雄となったジョン・コナーの母親もこんなんだったと言う、映画を見終わって後から思い返せば一笑いの台詞なんだけれど、実際にターミネーターがシリーズ化され、その度にサラ・コナーが英雄化されて行き、「エイリアン」シリーズのシガニー・ウィーバー演じるエレン・リプリーと並び「最強の女」になってしまった今から見ると、本当にこの場面「100年後には笑い話よ」になってしまっている事にゾクゾクした。あのサラ・コナーって、始めはこんな感じだったの?だし。

あと、その後のシリーズでは核戦争や機械支配の回避を目的として動いていた感はあるけれど、これでのサラ・コナーって、その崩壊した未来も受け止めつつ我が子と立ち向かおうとしている感じで、始めから未来は決定していて変えられない感じもする。

構成も上手く出来ているけれど、編集も良い。
カット割りも現在的な短く切って早く見せて行く形で緊迫感があるし、銃撃戦もパッと切り替えてモッチャリしていない。
主役以外は脇役とはっきり割り切っていて、結構出て来ていた刑事二人もあっさり退場させてしまうし、カイル・リースでさえ劇的なお涙頂戴な延々と引っ張る退場にはしておらず、あっさり。ここら辺は「今は何を見せるべきか」がはっきりしている。

役者もやっぱり良い。
リンダ・ハミルトンは、「ターミネーター2」でのギスギスして精神的にもヤバいけれど最強なサラ・コナーとは別人。優しそうで、何処か抜けた感じのする普通な女の子になっている。
アーノルド・シュワルツェネッガーはほとんど台詞無い分、あの「I’ll be back」含め、喋ると不気味さが増すし、何より肉体は最高に鍛えられていて、始まりの裸は素晴らしい。でも、それ以降はご自慢の肉体を見せず、逆にそれがアーノルド・シュワルツェネッガーの役者としての初期の中でもこの映画は特筆され、アーノルド・シュワルツェネッガーと言えば「ターミネーター」になった訳も分かる。
マイケル・ビーンは、この映画では最高に良いのに、その後の映画が恵まれなかった感じをこの映画を見ると改めて思う。

知らずにびっくりしたのは、ランス・ヘンリクセンが出ていた事。
ランス・ヘンリクセンと言えば「エイリアン2」でのビショップの印象が強く、「エイリアンVSプレデター」でも出演しているから、ターミネーター、エイリアン、プレデターの三大クリーチャーと共演しているという凄い役者だったのか。
これも知らず、この映画を色々調べてみて知った事だけれど、「エージェント・オブ・シールド」のシーズン1に登場したエージェント・ジョン・ギャレットでお馴染みビル・パクストンも三大クリーチャーと共演していたんだ。
この映画ではどれがビル・パクストンなのか分からなかったけれど、一番初めに登場してアーノルド・シュワルツェネッガーに殺されたチンピラ三人組のリーダー格の青髪。
「その隣の人、見た事あるな…?」と思って調べたら、「X-ファイル」のバウンティハンター役で見たブライアン・トンプソンか。

「ターミネーター」と言えば、あの有名な「♪ダダンダッダダン」って曲。
でもしかし、オープニング・クレジットで流れた音楽の「これじゃない」感にビックリ。耳馴染んだ「♪ダダンダッダダン」ってのは、「ターミネーター2」での編曲された方なのか。この映画での「♪ダダンダッダダン」って切れが無く、シンセサイザーのメロディ部分も弱いし。タンジェリン・ドリームとか、ヴァンゲリスっぽい。
この映画での音楽担当だったブラッド・フィーデルという人を調べてみたら、ダリル・ホール&ジョン・オーツのサポートメンバーだったそうで、何か意外。

この映画、サラ・コナーとカイル・リースの恋愛映画であった事が意外であり、それが非常に泣ける事も知らず、恋愛映画としても非常に良かった。
それに何より、かつて長らく君臨した三大クリーチャーであるドラキュラ、フランケンシュタインの怪物、狼男から、1980年代から現在に至るまで長らく君臨する事となった三大クリーチャー、エイリアン、プレデター、そしてターミネーターが登場し、強烈な印象を残した映画でもあり、完全に崩壊した訳でなく、暗雲立ち込める未来を描き、グルグルと周る円環構造のタイムトラベルSFとしても良く出来た映画で、様々な部分で現在に至るまで様々な事物に影響がある凄い映画。
何より、わたしが子供の時から何度も見ているはずなのに、今尚ワクワク、ドキドキして最後まで一気に見れてしまうという素晴らしい映画。

☆☆☆☆☆

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