十一人の侍

2012年10月03日 水曜日

夏八木勲主演の時代劇「十一人の侍」。

隣の藩の殿様が勝手にやって来て因縁付けて無茶したので藩主が殺されるが、その殿様は将軍の弟だったので逆に殿様はお咎め無しで、藩主が殺された方の藩は取り潰しに追い込まれる。その為、殿様暗殺を目指し立ち上がる侍達の話。

話がスカしばっかりで、どうにも盛り上がらない。行き成り江戸で暗殺相手の殿様が来ている茶屋を何故か探り当てていたり、江戸ですぐ目の前に敵がいて、すっ~と行って刺せば仇討完了なのに何故か見逃し、「無駄に命を捨てるな。」でその見逃した理由も全く無いし、江戸行ったけれど結局襲うのは帰り道だしで、何がしたいのか分からない事だらけ。そもそも往来で堂々と襲い掛かる予定でもないのに、十一人も仲間が必要なのかと言うのがある。十一人もいれば大人数なので早い段階で色々と気付かれると思うのだけれど。そんな事が最後にあるだろう大きなチャンバラを見せる為だけの引っ張りの展開なんだと分かり始めると、その展開に段々白けて来る。しかも終盤の森での襲撃は、やるぞやるぞで引っ張っておきながら、それでもまだやらず、まだまだ引っ張る展開でもう駄目。実際の最後のチャンバラは、それまで色々策を練ったけれど結局何もしなかったのに、最終的には成り行き任せの正面からただ突っ込むというグダグダ感一杯の戦い。それまで積み上げて来たはずのモノも必要無いスカしっぷりで乗り込めない上、あくまで時代劇としてのチャンバラでしかない、あの刀で切った時の「ジシャンッ!」という、何の音か分からない後で付け足した事しか感じない偽物の効果音が大雨の中なのに響き渡るものだから、白けっ放し。この最後のチャンバラは、雨で泥まみれな侍が大勢に立ち向かい、この映画の題名からも分かる様に「七人の侍」の真似をしているけれど、「七人の侍」がそこまで積み上げての戦いで爆発的な高揚感の上に哀しさも出ていたけれど、この映画は最後のチャンバラまでがスカし過ぎる台無しな展開なので、盛り上がるはずの最後の大立ち回りが盛り上がらない事請け合い。しかも、そこまでで人物が立っているのが夏八木勲と西村晃位で、序盤の主役であったはずの里見浩太朗でさえ脇役の一人という目立たなさ。なので、次々と切られて行ってもそこに哀しさが出て来ない。それまでの時代劇の逆を突く展開なのだろうけれど、盛り上がりを削いでしまうのはいただけない。
題材として、封建時代の身分制度や見栄で人の生き死にや生き方を強制される理不尽さを描いてはいるけれど、ちょっと考えればこれって「忠臣蔵」。だから最後まで特に何もしないって事なんだろうか?
水野忠邦とか、松平斉厚とか、史実の人物が出て来るけれど、実際の人物や歴史とは大きく違う様で、歴史の隠された、消された裏側を見せるという訳でもないので、何でわざわざ実際の人物を使い、歴史と掛け合わない話にしたんだろうという疑問は湧いて来る。

役者は中々良い。
夏八木勲は、硬い一途な侍として、グッと堪え、哀しみも見せる。だけれど、始めは策士として何かやりそう、彼に付いて行けば大丈夫という感で一杯なのに、見終わると間抜けも良いとこ、結局何も考えて無かったし、ギリギリ目的果たしたけれどほとんど何も出来てないじゃんな、駄目な奴でしかない。
役者の中では、第二代水戸黄門こと、西村晃が一番印象に残る。夏八木勲もそんなでもないけれど、他の役者が如何にも時代劇な大袈裟な、わざとらしい演技をしている中、一人現代劇的演技で、大きく闊歩している感じが気持ち良い。身長が160cmもないのに、ガンガン前に出て来て目立っている。小汚いのにお洒落な剣士といった風貌で、登場や参加は一人違う横道からだし、結局美味しい所持って行くし。
それから、やっぱり佐藤慶は悪役が似合い過ぎる。

演出では、最後の大雨の中を馬で駆け抜ける所を正面から見せたり、森の中の光の落ち方とか、結構良い。妻の鼻から下の横顔を映し、そこに手を添えるなんて演出、時代劇っぽくなく、ヨーロッパの恋愛映画を見ている様。

大人数での仇討という王道の話だけれど、常にスカす展開でドンドンと盛り下がり、一番盛り上がるはずの最後のチャンバラの頃には最早集中力は存在しない。最後までチャンバラが特に無いのに、この引っ張っておいての肩透かしで突入する大一番にガックリ。

☆☆★★★

« | »

Trackback URL

Leave a Reply