間諜X27
2012年07月28日 土曜日マレーネ・ディートリッヒ主演の映画「間諜X27(Dishonored)」。
第一次世界大戦の中、一人の娼婦がスパイとして見込まれ活動を始める。
男を騙してのスパイモノだからサスペンスを期待するのに、これが非常にもっちゃり。マレーネ・ディートリッヒが綺麗なので、ツンとしていれば男が寄って来、そのまま付いて行けば間諜出来てしまう簡単な展開で、緊迫感や見ていての緊張感は無い。諜報活動と言うとワクワクするけれど、この映画での諜報活動は、マレーネ・ディートリッヒが部屋でピアノ弾いて、相手とまったり会話するだけで、ワクワク感など出て来ない。
それに、分かり難い所も結構ある。彼女が何の情報が目的で活動しているのかや、結果何の情報を手に入れたのかも良く分からない。そこが有耶無耶なのでやっぱり話は盛り上がらない。一番の不可解は、死刑を待つマレーネ・ディートリッヒは独房らしき所に入れられているのに、綺麗に化粧し、豪華な服を着、何故かピアノがあって弾いているし、飼い猫もそこにいるしで、何の特待なのかさっぱり分からないし。
この映画の製作年1931年と言うのが大きいのだろうが、非常に時代性を感じてしまう。現在だと、重要な情報や任務がある時、男性ならまず気を付けなくてはならないのは女性と言うのはどんな話でもそうだけれど、これは女性だから気を許すと言うよりは、女性だからそれ程気にせず、だからスパイとして上手く行くというのがどうも…。始まりに「偉大なスパイになったであろう。もし女でなかったならば。」と字幕で出て来るけれど、これを見ていても、女でなければスパイとして活動出来なかったし、彼女が凄腕のスパイには到底見えない。
それと時代とは言え、政府関係の建物内で兵士がバッカバカ煙草吸って、大理石の様な床でも煙草捨て踏み消すのにはちょっと驚く。
確かにマレーネ・ディートリッヒは綺麗。ヴァルカン人以上に眉毛が細くて長いけれど。更に、ばっちり化粧の着飾った女性から、化粧もほぼしておらず、普通なロシア娘を演じている時は、別人に見え、非常に幅広い役を演じていて驚き。
演出として気になるのも、やっぱり時代性。舞台劇の様に、遠目から固定された場面の長回しだったり、回想はクロスフェードで回想場面入ったと思いきや、回想場面に行き切らずクロスフェードのまま元の場面に戻って来る中途半端な気持ち悪さがある。このどちらにも行き切らないダブる映像は頻繁に挟み込まれ、見ていてもイライラする。
時代や設定等、おもしろい題材ではあるけれど、80年以上経ってしまった今のサスペンスを知っていると、この間延びした展開や演出はどうにも退屈。マレーネ・ディートリッヒの綺麗さや変身ぶりがなければ、どうにもこうにも。
☆☆★★★