プラトーン

2012年02月26日 日曜日

1987年のアカデミー賞で、作品賞・監督賞・編集賞・録音賞を受賞したオリヴァー・ストーン監督の映画「プラトーン(Platoon)」。

その後のベトナム戦争や、戦争の描き方を変えたとも言われるだけあって凄いけれど、娯楽性は無く、トム・ベレンジャーウィレム・デフォーとの姿を見て揺れ動くチャーリー・シーンという一人の青年の目から見た現場での出来事を淡々と客観的に描き続ける。その分、人間が混乱や慣れによって狂気に堕ちて行く姿や、それでも信じるモノを貫き通そうとする姿が響いて来る。中でも「政治のせいだ。」と言う台詞が出て来るけれど、それによって個人が追い詰められ、弱い者に背負わされ、そのはけ口がまた弱い者へと向いて行くのは、見ていても最悪。この余りに重すぎて見たくないのに、目を離せないのはオリヴァー・ストーンの力。ただ、最後は結局嫌っていたトム・ベレンジャーと同じ人間になってしまうのに、特に悩んだり、後悔したりしないチャーリー・シーンは、今まで描いて来ていたモノをちゃぶ台ひっくり返す様なままで終わるのは良く分からないし、余りに敵の顔が見えて来ず、自分と戦っていたと言うのは、そうかもしれないけれど、最後の最後でやっぱりちゃぶ台ひっくり返す様な主張と、綺麗さで、何だかなぁとは思った。
そして、役者陣の力。チャーリー・シーンと言えば今ではやり手のやり手だけれど、これでは本当に若く、その新人感が顔から滲み出ている。しかし時間が経つに連れて、徐々に顔が引き締まり、兵士になって行くのは見事。トム・ベレンジャーやウィレム・デフォーの二人の対決は、演技的にもバッチバチにやり合っていて、その顔の迫力にも打ちのめされる。この二人が濃過ぎるのだけれど、フォレスト・ウィテカーや、ジョニー・デップも出ているし、涙も無く散って行く周りの役者も非常に良い。

全編に渡って激しい主張は出さないけれど、静かに戦争の最悪感、嫌悪感を出し続け、凄い映画ではあるけれど、何度も見たくはない、見れない映画。

そう言えば、この「プラトーン」で有名な場面で、「プラトーン」という物真似だと必ずこれな、「ひざまずき、天を仰ぐ様に両手を掲げる」のはウィレム・デフォーだったとは知らなかった。

☆☆☆★★

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