海の牙

2011年11月15日 火曜日

第二次世界大戦のドイツ敗戦直前、南米へ向けて発進したドイツの潜水艦に無理やり連れてこらされたフランス人が見た内部の人間模様の映画「海の牙(Les Maudits)」。

潜水艦の中の人々はドイツ軍の兵士だけでなく、新聞屋や企業家、学者等一般人もおり、台詞もドイツ語フランス語が混じる、静かだけれど混沌した状況。その状況がドイツの敗戦によって更に混沌とし、敗戦等関係無く突っ走ろうとする人と、それが無駄だと分かりこの状況から逃げ出そうとする人々の葛藤を、これに巻き込まれてしまったフランスの普通の人の目から見た話になっている。このフランス人も、自分が殺されるかもしれない状況を知り、手助けもあり逃げ出そうとするも逃げ出せない牢獄の様な嫌な中を淡々と描いている。
初めはこのフランス人の知り過ぎている独白が「何だかなぁ…。」と思い見ていたけれど、最後で納得。どちらに転ぶ訳でも無く、自分の事さえ冷静に語るのが、はっきりとは主張を見せずに訴えかける姿勢がこの映画で貫かれている。でも何でこの主役のフランス人がドイツ語が出来たのかは謎のままだし、話の展開上仕方ないとしてももう少し何か言い訳が欲しかった。
映像的には戦闘する訳ではないので地味だが、潜水艦の中をワンカットでずっと縦に見せる所なんかは、後の潜水艦モノで見られる様な演出でなかなか良い。

もう少し周りの人間の考えが出れば群像劇としてもおもしろかったのだが、それでも派手ではなく、淡々と抑えた感じで声高らかに主張しないけれども嫌さ加減が伝わる映画で、戦争を別の視点から描き、社会派でもサスペンスでもある映画だった。

☆☆☆★★

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