龍拳

2022年11月27日 日曜日

ロー・ウェイ製作・監督、ジャッキー・チェン主演の1979年の香港映画「龍拳(Dragon Fist)」

唐山道場の道場主のソウは武術大会で優勝したが、その武術大会に参加しなかったが自分こそが最強だと言う百勝道場の道場主ジョンが挑んで来た。
二人は対決するとジョンが勝ち、急所を突かれたソウは致命傷を負った。
死に行くソウに弟子のタン・ホオウァンは残されたソウ夫人と娘のモゥンランと道場を守る事を誓った。
それから三年後。
タン・ホオウァンは師匠の復讐の為にソウ夫人とモゥンランを引き連れてジョンの道場に乗り込んだが、ジョンの妻がジョンがソウを殺してしまった事を嘆いて自害し、それを悔やんだジョンは懺悔の為に片足を切ってしまっていた。
復讐しきれないタン・ホオウァンはジョンを敵対視するアィ一家に雇われる事となり、彼らの為に犯罪に加担してジョン達を攻撃し始めた。

ジャッキー・チェン主演映画だけれどジャッキー・チェン映画の何時もの笑い要素がほぼ無く、ジャッキー・チェンが攻撃を受けて痛がるリアクション芸とか変顔の顔芸とかも全く無い非常に真剣で暗い映画になっていて、作風としてはこの映画が目指す方向性は分かるし、話も師匠の復讐劇と揉めている二団体の狭間で揺れ動く主人公と分かるけれど、全体的に何を見せたいのかを絞り切れず、常に主人公が変わって行ってしまう様な展開で凄い散漫に感じてしまったし、主人公の考えが見えて来ない上に出番が少ないので何だかよく分からなくなってしまってあんまりおもしろくなかった。

始まりから師匠の死からの若い弟子の復讐劇になるかと思いきや、そこから三十分位まで敵のジョンのその後の悔恨をじっくりと描いているので行き成り「あれっ?」感で一杯。
このジョンの妻が師匠と関係があり、それを怒ったジョンが師匠を殺してしまい、それで妻が自害し、その為主人公の復讐に対して足を切ると言う結構ぶっ飛んだ反省をするという復讐相手をただの悪役にしないという展開はおもしろいものの、その足を切った事が分かった後のジョンは登場人物の中のその他一人位に急に描きが少なくなり、前半のジョンの描きは何だったの?という位存在感が一気に無くなってしまう。

その分主人公の話が前に出来るのかと思いきや、ジョンの弟子だったり、アィ側の話が多くなりと主人公が薄いのは変わらず。
そもそも師匠が負けたので師匠の復讐の為に師匠を超える位強くなる修業したとかも一切描かれず、ジョンのその後が描かれた後は行き成り三年後で、主人公も何故か強くなっているとか、主人公の描きが足りな過ぎて初っ端からこの主人公に乗って行けず、置いてけ堀。
その後も主人公は足まで切ったジョンに対して更に殺しにかかろうとしたり、自分を育てたソウ夫人の病気の薬をもらえるなら見知らぬ他人をボコボコにするわ、子供までを殺しても気にせずアィ側についてるわで、何か感情が欠落した部分があり全然ついて行けず。
それなのに最後で急にアィ側に付くのを止めたけれど、これの理由がいまいち何なのか分からず、やっぱり最後までついて行けず。

それにこの主人公側の人間関係が中々分からないのもついて行けなかった部分。
初めは主人公は弟子かと思って見ていたら中盤辺りで急にモゥンランに「兄さん」と呼ばれて、あれ?この二人兄妹なの?と思ったけれど、でも主人公はソウ夫人の事を「母さん」ではなく「ソウ夫人」と呼んでいて主人公は前妻の子供でソウ夫人が後妻なのかと思っていたら、終盤で主人公が「自分は孤児で師匠に拾ってもらった」と言い出して、主人公はあくまで師匠に息子の様に育ててもらったんだと関係性が分かり、何で初めに関係を説明せずに終盤で出して来て、見ている方をずっとモヤモヤさせたままにしたんだろうと疑問ばかり。
初めにジョンの妻が師匠と関係があったのを見せていたので、てっきり主人公はジョンの妻と師匠の子供。もしくはジョン夫妻の子供で、主人公が復讐しようとしていたジョンは実は自分の父親だった!的な展開になるのかと思いきやそんな事も無く、この人間関係を延々と説明せずに後出し後出しで説明して来るので勝手に想像ばかり膨らんでしまい、これって別に主軸の話と関係無いので人間関係を説明しない意味が全く無くて、人間関係を想像させてしまう事が邪魔。

主人公とこのモゥンランは恋愛感情があるのか?無いのか?もよく分からなかったし、ジョンの娘も主人公に気がある風な展開だったけれど何も無いし、この女性陣の使い方も結局何を見せたかったのだろう?

百忍道場はこの辺りでは最強集団っぽいけれど、やたらとアィ一家に出し抜かれまくりだし、攻めて来たアィ一家にあっさりほぼ全滅させられているし、アィ一家も最後になって急に自分達の企みを一切合切自白するとか、どっちもどっちで間抜け感が凄かった。

アィ一家も弟が初めに主人公にちょっかいを出したから主人公がアィ一家の手下になってからも協力しつつも敵対関係が描かれるのかと思いきや、それも無い所か、その後弟は空気な存在でほぼ活躍が無し。
兄のアィもそれまで強さを発揮する場面が一切無かったのに最後の戦いで急に強い感じを出して来たりと、どの人物もその場その場で急に焦点が絞られて前に出て来るけれど、それ以外では空気とか脚本が適当過ぎ。

この映画、ジャッキー・チェンが主演で主人公の復讐劇なはずなのに周りの人々を描く配分が多くて主人公の描きが少なくなり、結局主人公が薄くてこの主人公に乗って行けないままで終わってしまった。

☆★★★★

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