犬神家の一族(2006年版)
2012年04月04日 水曜日1976年の「犬神家の一族」と同じく主演石坂浩二、監督市川崑で再映画化した2006年版の「犬神家の一族」。
これは面白い。何が面白いって、元の「犬神家の一族」とほぼ一緒。1976年版の方見てからだと、その同じさに爆笑してしまう。構図、演出、台詞に至るまでほぼ一緒で、もはやセルフパロディ。ニヤニヤ笑いながら見れてしまう。違うのは石坂浩二・加藤武・大滝秀治以外の俳優陣位。その石坂浩二・加藤武もすでにおじいさんで、見ていると哀しくなって来る。大滝秀治も年は取っているのだけれどあんまり変わりがない。主役側の役者が歳を取っているので、全体的に妙な年寄り感がある。特に前の「犬神家の一族」を見た後だと尚更。
松嶋菜々子も、未だに私の中では「とんねるずのみなさんのおかげです」で下ネタコントしていたコメディエンヌな事もあり、存在感や演技的にもそんなでも無し。
演出や台詞は、分かり難かった部分を補う様な形で手が加えられていたり、増やしている部分はある。それに聞き易くする為かゆっくり間を持って喋るせいもあるのか、何だか皆演技がわざとらしく、下手くそに見える。萬田久子の「あ~!私の佐智!酷~い!」には爆笑してしまった。
それに全体的に演出がもっちゃりしている。1976年版にあった様な先鋭的な演出は身を潜め、退屈な感じ。以前は複数にカットを割り、早く切っていた場面もワンカットだったり、あの印象的な回想場面も似てはいるけれど、白黒のコントラストは弱いわ、スローの残像も少ないわで、物凄く角が取れ過ぎて丸くなったと言うよりは、もっちゃりし過ぎで印象が弱くなってしまっている。監督の市川崑が年取り、あの勢いも枯れてしまったのがはっきりと分かり、寂しい限り。
この映画が1976年版と全く持って同じな構図・演出・展開なので、その同じさを見比べるという所のおもしろさはあるけれど、その面白さも中盤位までで、見続けていると特に進化も無く、全く同じ事をもう一回繰り返しているという、これこそが悪い意味で実験的な映画になってしまっている何じゃこりゃ感一杯なリメイク作。何でこんなリメイクを作ったのだろう?これを見てそんなでもなかった人に、元の「犬神家の一族」のDVDを買わす為の宣伝映画なのだろうか?そう、この色んな意味で衰えが見える映画を見る位だったら、勢いのある1976年版の「犬神家の一族」を見るべき。
☆★★★★