黒部の太陽
2012年04月05日 木曜日三船プロダクションと石原プロモーションが共同制作、三船敏郎と石原裕次郎が共演した大作映画「黒部の太陽」。
この映画の魅力は、何と言ってもその本物感の圧倒的な迫力。実際の山での撮影はもちろん、凄いのはトンネル内を再現したセット。木と岩で作り上げ、実際の水をふんだんに溢れさせたセットの、その奥行き感、存在感は半端無い。トンネル崩壊で水が溢れ出す場面は、合成さえも使わず実際に水を流しているので半端無い迫力。徐々に崩壊する映像は、まるでそこで体験してるかの様に見える恐怖感。
画面の強さは半端無いが演出は微妙。如何に工事が大変か分かる様に、ご丁寧に登場人物での説明台詞があるのだけれど、だったら途中に入る画とナレーションの説明はいらんだろうし、その説明を挟むので物語としてはそこで流れが悪くなるし、そんなにドキュメンタリー調にする必要も無いと思うし。
それに、どうもカメラの脇が歪むのが気になる。ワンカットで横にパンするとそれが強調されるので、どうしても気になる。それと微妙にカメラ動かすのも気になる。手持ちでも無いのにフラフラと、ゆっくりと上下左右ブレたりしているので、物凄く気持ち悪い。1カットで撮って変な、微妙なカメラの動かしをするのだったら、カット割れば良いのにと思う。あと、効果音の使い方がわざとらしくて白ける。
役者は、三船敏郎は武骨な真面目な人を好演していて、彼の背広姿は初めて見たし、気が引けている感じの役も初めて見たかもしれない。こういう感じの三船敏郎も良いし、やっぱりカッコ良い。しかし、石原裕次郎はそんなでもない。確かに若い時は男前と思うけれど、歳を取ると肉団子みたいな顔しているし、演技もそんなに上手くは無い。五社協定とかあり、当時のこの二人の共演、共同制作は凄い事だったのだろうけれど、同時期に体験しているか、そこら辺を良く知ってはおらずぱっと見ると、「三船敏郎と石原裕次郎が共演か。へ~。」位になってしまう。
展開としては、トンネル掘りの苦難と掛け違う人間関係が延々と描かれ、長時間だけれど見ていられる。ただ、人間関係の部分は前に出して来るのだけれど、投げっ放しジャーマンで特に決着所も無いままで終わって行き、何の意味があったのか良く分からない部分も。三船敏郎が必至に頼み込んでも反応が鈍かったのに、偉いさんが頼み込んだらあっさり頷いたけれど、これで彼が上層部に不満を憶えたという話は無いし、その後のあれ程手こずっていた硬い岩盤の部分をどうやって切り抜けたのかも良く分からないままあっさりそこは通過しているし、石原裕次郎の親子関係の決着は?とか、作業員との確執に加え、一番おいしい貫通の部分を抜け駆けて勝手に一人でしてしまって他の皆は何にも言われないの?とか、疑問と省いてしまった感が。それにあれだけ三船敏郎が作業員の安全を口にしていたのに、出来上がったダムの慰霊碑には相当数の殉職者が載っており、そこら辺はそんなにいるという描写がなかったので「あれっ?」感が強かったり。それに、これは黒部ダムの建設の映画とばかり思っていたら、黒部ダム本体建設が奥地過ぎる為、資材等を運ぶ為のトンネル、関電トンネルを掘るのが主題で、延々とトンネル掘っていたのにダムはあっさり完成してしまうので、やっぱり「あれっ?」感が強い。全体的に凄い圧倒感がある割に、工事以外の部分の脚本がまとまりが無く、バラバラな感じが強い。これが完全版だったらきっちりとなっているのだろうか?
この「黒部の太陽」は石原裕次郎が「映画館の大迫力の画面・音声で見て欲しい」と言い残したのでソフト化されていないが、別に「ソフト化するな」とは言っていない訳だし、「小画面しかない貧乏人の見るモンではない」と言っている様に思ってしまうし、今ではテレビは大画面で音声も良くなっているし、ブルーレイで画質は良いし、「出しゃあ良いじゃん。」と思うし、だったら何で定期的に劇場公開しないのかと思う。このTV放送でさえ33年ぶりで公開時の196分ではなく、2時間20分の海外用短縮版。しかもNHKが最悪で最低なのは、そんな稀な放送なのに地震速報を入れた事。地上デジタル放送になり、わざわざBSで震度3位の地震速報を入れる必要性って何?いい加減、視聴者に向いていない「報道してますよ」の良い訳はやめるべき。
☆☆☆★★