オデッセイ
2025年05月23日 金曜日リドリー・スコット制作・監督、マット・デイモン主演の2015年のアメリカ映画「オデッセイ(The Martian)」
アンディ・ウィアーのSF小説「火星の人(The Martian)」が原作。
有人火星探査アレス3で火星での調査を行っていた六人の調査隊だったが、強大な砂嵐が来た事で火星上での調査を打ち切って火星からの脱出を行う事となった。
脱出船への移動中に砂嵐よって飛ばされた資材にぶつかり植物学者のマーク・ワトニーが行方不明になってしまう。
脱出までに猶予が無かった為五人で脱出し、マーク・ワトニーは死亡したと思われていた。
しかし、マーク・ワトニーは生きており、生き残り、地球に帰る為に持って来て残された食料のジャガイモを栽培し始めた。
Amazon プライムビデオで配信が終わりそうだったので見てみた映画。
前知識としてはマット・デイモンが火星に一人で取り残されるという事を何故か、何処かから知っていて見たけれど非常におもしろいハードSFで、終始ワクワクと興奮で見入ってしまった。
一人取り残された事を受け入れて、そこから「どうしようか…」で、まず食料。通信。気晴らし等々、順番に一つずつ問題を解決しながら進む展開がちゃんと現実に沿ったSFをしていて、すんなりと入って来ながらも楽しい。
主人公もそうだし、地球の人々も、宇宙船ヘルメス号の人々も冷静な科学者・技術者なので状況把握からの何とか解決策を出して行くのが非常に気持ち良い。
ちゃんと現実の過去のマーズ・パスファインダーに繋げて、そこから画像での通信を行い、文字での通信に繋げて行く上手さにはしびれたし、主人公が「地球の賢い人達が考えてくれている」という安心感や期待感を見せて、科学に対する信頼や愛情を気持ち良く描いていて、こういう厳しいけども優しいSFは本当に楽しい。
映像も基本的に火星の荒涼とした景色なのでCGも違和感が無く、その景色は本来なら火星に一人ぼっちの孤独感を見せているんだろうけれど、わたしはこういう誰もいない場所に一人だけというのにワクワクしてしまうので、この火星の景色も凄いワクワクしてしまった。
展開としては、常に問題が起こり続けて、何かが上手く行きそうだと思うと必ず問題が起きるって、むしろそっちでの都合の良さはちょっと感じたり、それを言い出すと主人公が植物学者だから植物学者じゃないと成立しない話ではあるけれど、一本の映画の起伏としてはどうしてもこういう問題の連続にはなってしまうんだろうなぁ。
問題が起こらないと余りに淡々と進んでしまうんだろうけれど、それ位サスペンスやスペクタクルが無いガッチガチのハードSFでも好きだけれど。
あと、こういう話だと主人公は地球に帰れるのか?死んでしまうのか?は初めからずっと気になる所で、初めは何とか上手く行き始めた所で「リドリー・スコットだし、これは死ぬな?」と思い始め、しかも途中からショーン・ビーンが出て来たものだから死の匂いがプンプンしていたのだけれど、最後の方の展開で「ああ、これは帰れるのか」と思い安堵して見られ、映画外の周りの情報から死ぬか死なないかで楽しんでもいた。
一番怖かったのは宇宙船外を命綱無しで動き回っている乗組員。
あれは流石に映画的にやり過ぎだとは思ったし、これから主人公を助けられるかどうかの直前にここでドキドキさせる必要ある?とドキドキしながら見ていた。
それと、火星でもダクトテープは万能で、この映画でもダクトテープ最強論を見せるかの様な使い方も楽しかった。
このダクトテープ最強論を広めたのって「冒険野郎マクガイバー」なのかな?
役者陣は、やっぱりマット・デイモンはこういう感じの学者とか普通の人間の時の方が抜群に良い。
やたらともてるとか、超人的な身体能力とかは見ていても全然しっくり来ず、普通の人の方が上手く見える。
ヘルメス号の人達は何処かで見た事がある気がしたのだけれど各人の経歴を見てみたら何かの映画やドラマで覚えている訳でもなかったので、脚本と役者で役が立っていたからか。
ショーン・ビーンは死にそうな顔をしていたけれど何なのだろう?
主人公以外の役は皆結構濃いけれど、それ程掘り下げる感じでもなく、通信担当、広報、他の人が全く気付かなかったスイングバイを見つけ出した人、中国側の人達とか、もっと描きが欲しかったとも思ったけれど、そこを描き出すとただでさえ長い上映時間が更に長くなるか。
テレビドラマのミニシリーズ等で更に各人を描いたのを見たいけれど、そうすると今度は映像的にお金がかけられないか。
それにしてもこの意味不明過ぎる邦題は何なのだろう?
「オデュッセイア」から来ているらしいけれど、まだ映画内に「オデュッセイア」からの引用があるとかなら分かるけれど完全に映画外の所から持って来て、映画を見終わっても「何故オデッセイ?」にしかならない邦題で、単に直訳や原作の邦題でいいじゃんとしかならない。
日本の映画会社の人間が頭を使うとろくな事が無いし、頭を使わないとろくな事が無いしで、どうしようもない。
この映画、きっちりとハードSFを見せていて、宇宙SFとしても、一人ぼっちのSFとしても非常におもしろかったし、ワクワクしたし、見入ったし、掴まれまくった。
余り離れた未来ではない地球近辺のハードSFではこれまで見た映画の中で一番おもしろかったと思う映画でした。
☆☆☆☆☆