少林寺三十六房
2024年05月30日 木曜日ラウ・カーリョン監督、リュー・チャーフィー主演の1978年の香港映画「少林寺三十六房(少林三十六房)」
明が滅亡して清が支配をし始めた広東。
海産物問屋の息子リューは清の支配を憎み始め、通っていた学校の先生が明の復興を目指す反乱分子だった為に彼に協力し始めた。
広東での清の将軍による鎮圧でリューの家族は皆殺しにされてしまった。
リューは強い力さえあれば戦えたと思い少林寺へと向かい修業を始めた。
「片腕必殺剣」「新・片腕必殺剣」と見ておもしろかったので、続けて古い香港アクション映画で配信が終わりそうだったのでこの映画も見てみた。
リュー・チャーフィーは名前は知らなかったけれど剃髪姿は何かで見た事があったし、第三十五房の水に浮いた丸太を渡る場面が何か見た事ある様な気がして大分昔に見た事があったのかもしれないけれど内容は覚えが無く、初見として見てみた。
序盤から少林寺に行くまでは「成程成程」と思いながら見ていたけれど少林寺での修行になるとやり過ぎでちょっと冗談染みて来て心が離れ、終盤は「これで良いの?」でスッキリしないまま終わってしまった。
構成は、初めの三十分位が主人公が少林寺を目指す理由で、中盤三十分位が少林寺での修行で、終盤三十分位が復讐となっていて、この各部分で結構雰囲気が違っていた。
少林寺を目指すまでは歴史物でもあり、真っ直ぐな主人公が力を求めるかまでを結構じっくりと描いていて導入はそれなりにおもしかった。
ただ、これ以降もなんだけれど主人公が余りに素直に真っ直ぐ過ぎるので、これと思ったらそれに突っ走るのにあんまりついて行けないし、この序盤を見ていると主人公のその突っ走りが周りの事を考えずに不幸に導いたと思えてしまって何だかなぁ?な感じもあった。
少林寺に入ってからは結構悪乗りが過ぎて笑ってしまったけれど「どうなの?」感が沢山。
主人公が一年間雑用ばかりで武術を習えていなかったけれど、武術で有名な少林寺でも言わないと習わしてもらえないの?
基礎訓練では水に浮いた丸太を渡るとか、片手で重い錘で鐘を鳴らすとか、頭突きしてから線香をあげるとか、巨大線香の間で顔を動かさずに目で光を追うとか、ここら辺が冗談みたいな悪乗り訓練の連続でニヤニヤしてしまったけれど段々とやり過ぎ感で醒めてしまっていた。
それこそ何処まで本気なのどうなのか分からない昔の少年バトル漫画みたいで、そこら辺の漫画がここから発想を得ているのかなぁ?とも思ったり、そこの房だけで集中的に鍛えるよりは毎日各房回った方が継続的に鍛えられるんじゃない?とも思ったり。
それにしても人が多過ぎ。
修行僧も各房の坊主達も大勢いて、少林寺って数百人から千人越えの巨大組織なのか。
武器を扱う様になってからは普通のカンフー映画になるんだけれど、それにしてもこの辺りのカンフー映画って三節棍好きだよねぇ。
最後も主人公が三節棍で敵が二刀流って、この映画の直ぐ前に見た「新・片腕必殺剣」では主人公や仲間が二刀流(から最後は三刀流)で敵が三節棍で、この映画も「新・片腕必殺剣」も同じショウ・ブラザーズ製作なので何か関係あるのかしらん?
終盤になると主人公が少林寺での修行が終わって外に出て復讐劇となるんだけれど、ここがどうにもついて行けず。
話の構成上最後に復讐にならないといけないのは分かるのだけれど仏門の世界だった少林寺から出たら仏門関係無し?
主人公は初めから復讐目的での少林寺で修業をしたけれど、少林寺では仏教を教えていたはずなのに主人公が仏教に触れて何か心変わりしたとかも無いし、修業を始める時に一番強い房として第一房が最初に出て来て見せていたので最終的に主人公もここで仏教的な何かを理解してその生き方を理解して武術よりも強いモノを見付けるとかになるかと思いきや全く関係無く、第一房は全然出て来ないままだし、坊主達も仏の教えを分かっていない主人公を外に出せば復讐だけの為に武術を使う事が分かり切っているのに寧ろそれを期待する様な感じで外に出していたりして、仏の道とか全然どうでもいいの?と疑問。
主人公も外に出た途端に復讐し始め、すぐ隣でほぼ死んでいる敵を何度も何度も切り刻んでいるのに「阿弥陀仏」と言って祈るだけだけどそれでも僧侶って…。
この終盤の展開も微妙で、この終盤に来て主人公に味方する新たな人物達が次々と現れ、皆まだ粗いけれど鍛えたら良い武術家になりそうな感じを出しているから主人公が作りたいと言っていた第三十六房で鍛えて仲間を揃えて清の軍隊と戦うのかと思いきや、結構直ぐに主人公と敵の将軍の一騎打ちになってお終いで新たな人物達が特に活躍する事も無いまま。
この終盤だと元々はもっと展開させるはずが長尺になり過ぎるので時間が無くて振りは入れたけれど全部端折ってしまった様な感じを受けてしまった。
この映画、中盤の少林寺での冗談みたいなやり過ぎ修行を見せたくて作った様な映画で、ここを笑って楽しめたらおもしろい映画なんだろうけれど、わたしはここで醒めてしまって、しかもその後の僧侶の格好はしているけれど復讐で人を殺す事だけが目的の主人公について行けずで、何だかなぁ…で終わってしまった。
☆☆★★★