ネメシス
2021年10月17日 日曜日アルバート・ピュン監督、オリヴィエ・グラナー主演の1992年のアメリカ映画「ネメシス(Nemesis)」
2027年。バイオ技術やサイボーグ技術が普及し、体の一部を機械化したサイボーグが一般的になっており、そのサイボーグを危険視した一団がテロリストとなっていた。
アレックス・レインはロサンゼルス警察の警官として犯罪者サイボーグを殺害していたがテロリストの一団と出会い銃撃戦になり重傷を負った。
体の多くをサイボーグ化したアレックス・レインは警察を辞めて裏社会で活動し始めるが、警察の上司だったファーンズワース長官に捕まってしまう。
ファーンズワース長官はアメリカ大統領と日本の総理大臣の会談の警備プランをアレックス・レインの元上司ジャードが盗み出しテロリストに売り渡そうとしているのでアレックス・レインに止めて欲しいと依頼する。
アレックス・レインは引き受ける気は無かったが、心臓に爆弾を埋め込まれてしまい渋々ながらジャードを追う為に東南アジアへと向かった。
映画が製作された1992年から35年後の未来が舞台で、バイオ技術やサイボーグ等SF要素はあるのに一切2027年には見えない1992年そのままな映像だけでも低予算映画だと分かる映画。
低予算でも発想や話がおもしろければ問題は何もないけれど、この映画は部分部分でおもしろい所はあるものの、話はよく分からないままグダグダと続いておもしろくはなかった。
SF技術が発展している割に予算を抑える為だろうけれど街並みとかの背景や自動車等の大型の道具のSF感は無く、ほぼ1992年そのまま。
まだ、衣装とかでSF感を出す方法もあるけれど、主人公はロングコートにサングラスと言う香港ノワールっぽい出で立ちで、他の人達の衣装も1980年代臭がプンプンする服装ばかりで、そもそも見た目の雰囲気で近未来SFにする気はなさそう。
体のほとんどが機械化したサイボーグが多く登場するけれど、機械部分が見えるのは銃撃で殺された時に金属部品やコードが見える位で、ほとんどの場面は「サイボーグだ」と言う台詞だけで、見た目は完全に普通の人間ばかりで、この部分でもSFにする気はない。
じゃあ話でSFにするかと言えば、サイボーグと人間との戦いが軸になるのに、どちらも見た目は人間なのでサイボーグ対人間感がない。
そもそも体の一部が機械化したのがサイボーグなのに、何で機械化していない生身の人間といがみ合って殺し合いをしているのかがよく分からなかった。
サイボーグ化出来る人間は裕福で、生身の人間は貧しいので機械化出来ずに怪我や病気でも生きられないみたいな話があれば納得は出来るけれど、サイボーグと人間との対立に関して説明が無いので何なのかもよく分からないまま。
わたしの感覚だとサイボーグ対人間って、全部の歯がインプラント人間対永久歯のまま人間の対立と大して変わらない位にしか感じられず、何で対立しているの?なんだけれど。
後半になって、人間を殺してその人物になり切った完全機械が登場して、そのロボットが人間を抹殺して世界を支配しようとしているという話になるけれど、このロボットも何故人間を殺すのか?とか、何故世界を支配しようとしているのか?とかを描いても、説明もしないのでよく分からず。
この映画のSF要素って、当時の他の映画やSF小説等で扱っていた「機械と人間の違い」とか「人間の手を離れたロボットの攻撃」とかの題材の上っ面だけを寄せ集めて押し込んで、それっぽいSFにはなってはいるけれど、本来主題となる部分の理由や説明を何もしておらず、それっぽいだけという仕上がり。
この映画はそんなSF部分が見せたいのではなく、銃撃戦や爆破をやりたいという派手なアクション映画を作りたいという方向性なんだと思う。
サイボーグなので撃たれても少しだけ銃弾に耐えて銃をぶっ放し続ける。
銃は弾倉に何発入っているの?な無限弾で、ショットガンでも何十発と撃ち続ける。
外に出ると急にあちこちが大爆発し、拳銃撃ったら着弾した所が大爆発。ショットガンも遠距離でも大爆発。
そして、この映画の一番の見所だったのが、敵に追い詰められた主人公が室内から逃げ出す為に床を円状に撃ち床を抜いて下階へを繰り返して一階まで降りて逃げ出す部分。
こういうハチャメチャな銃撃戦を見せたかったのか…とは分かるけれど、だったらSF要素は無くても全然いいし、まったりして何のこっちゃな話もいらなかったと思ってしまう。
あと気になったのが、登場人物達の髪型。
時間が経過したという意味があるのか、映画内で何ヶ月後とかの時間が飛ぶと主要登場人物達の髪型が違っている。
髪型がコロコロ変わるので次にその人が出て来ても前の人物と同一人物と全然気付かなかった。
長官とか主人公さえも違う場面では長髪ボサボサから短髪とかキッチリ整えていたりして見た目が全然違い、名前を呼ばれるまで誰これ?と思っていて、このわざわざの髪型変更って余計な気がした。
この映画、本当にSFはお座なりで、派手な銃撃戦を見せたかったならSF要素は邪魔だし、SF要素を入れて派手な銃撃戦をするのにサイボーグだから銃撃に耐えるとか、主人公が銃弾受けまくってボロボロになりながらも生き延びて撃ち返すとかが少な過ぎてやっぱりSF要素はいらない気がした。
☆☆★★★