サンシャイン 2057
2014年09月20日 土曜日ダニー・ボイル監督、キリアン・マーフィー、真田広之、ミシェール・ヨー、クリス・エヴァンス共演の2007年のイギリス映画「サンシャイン 2057(Sunshine)」。
太陽の活動が鈍り始めた近未来。太陽を活性化する為に送り込まれたイカロス1号は太陽到達前に消息不明に。七年後の2057年。大量の核爆弾を積んだイカロス2号が太陽へと向かっていた。水星の付近を通過した時謎の信号を受信し、それがイカロス1号からの信号だと分かる。
そもそも、太陽に核爆弾を撃ち込んだ所で何か起こる程の小ささなの、太陽って?とか、核爆弾が太陽に到達するまでに溶けて消し飛んでしまうんじゃないの?とかの疑問はあるけれど、ハリウッド映画的な変なハッタリかましたファンタジー感が少なく、SF部分は終始ハードSFを見せて中々おもしろい。船の進路転換をする時、太陽シールドの調整を忘れて損傷を受けて船体が危機に陥ったり、その補修も如何に太陽光や太陽風を避けるかとか、一々の細かい事が楽しいし、映画に真実味を与えている。
それに物事の決定の仕方と人物の描き方も上手い。物事を決める時は多数決という冷静さや判断の正しさを導き出せるとは限らない方法ではなく、専門家の意見で判断して船長が決めたり、一番非情で残酷な判断を下している人が実はキチンと冷静に判断を下しているとか、ギャーギャー騒がない感じが良い。
それに演出で上手いなと思ったのは、普通だったら船外活動時には宇宙服に入っている人から見た目線の映像にする所を、宇宙服のヘルメットの中の人の顔とヘルメットの目の穴の部分にカメラを置き、狭さや窮屈さの不安も見せるカメラ配置に感心。
しかし、大きな問題点もあって、この手の近未来宇宙ハードSFでベタと言うか、有りがちと言うか、この展開しかないのかという、次々と問題が起こり、それを解消しようとして乗組員が次々と死んで行く展開には、もう飽き飽き。これだけハードSFやって、人間関係で見せるのに、この在り来たりな展開は何ともはや…。しかも、終盤で行き成り如何にもダニー・ボイル的なホラーサスペンスになってしまうのも何だかなぁ…。
この映画の脚本家アレックス・ガーランドって、同じダニー・ボイルの映画「28日後…」でも脚本を書いていたけれど、それでも新鮮味が無いと言うか、ほぼこれまで使われてきた設定をそのまま使い、後半変な感じに持って行くというこの映画と同じ事をしていたので、脚本家の問題か…。
この映画でもそうだけれど、テレビドラマの「Lost」でも思ったけれど、真田広之って良い役で海外映画・TVドラマに出ているのにいまいちパッとせず、渡辺謙に何故か「世界の」と枕詞を付けるくせに真田広之の評価が高くないのって、やっぱり英語のせいなんだろうか。「Lost」でも英語部分は真田広之本人が吹き替えているけれど、日本語で喋る真田広之の演技は良いのに、英語で喋る真田広之の英語が結構微妙。英語だと演技が下手に見えてしまう。渡辺謙も日本英語的な感じで大して変わらない気もするけれど、どちらももっと英語が上手かったらもっと海外で持てはやされて、日本人役以外も出来て幅が広がるんじゃないかしら。
真田広之以外にも、ミシェール・ヨー、クリフ・カーティスなど最近の欧米映画の流れでもあるけれど色んな国の人が出演しているのに、何故か黒人がいない。しかも、最後に残るのは欧米人ばかり。欧米市場中心の映画産業だからしょうがないのかしら?
この映画、近未来宇宙ハードSFとしては非常に良い出来なのに、新しさを見せる事が出来なかった展開と、ハードSFなのにホラーサスペンスの悪乗りを持ち込んだ為に、見終わると「何だかなぁ…」と物凄い尻すぼみ。物語自体は良いのに、核となる脚本の部分がやっぱり良くない。脚本次第で、後世でも語られる映画になっていた可能性はあったのに…。
☆☆☆★★