恋はデジャ・ブ

2011年11月06日 日曜日

ビル・マーレイ主演の「恋はデジャ・ブ(Groundhog Day)」はコメディ映画だけれど、もはやコメディではなく人生を、そして人を哲学的に描いた映画になっている。

何故かグラウンドホッグデー(聖燭祭)の2月2日の一日にはまり込み、同じ一日が繰り返され抜け出す事の出来ない男の行動と変化の物語。始めは怪しみ、再び一日が初めから始まるので無茶をし、やがてその変化の無い連続性に絶望し死に続け、そして嫌な事が起こるならそれを回避しようとし、ついには悟りを開く。
このループものは、フィリップ・K・ディックが描くと抜け出せない、抜け出そうとしない後味の悪さになり、ウッチャンが世にも奇妙な物語ですればコメディになり、ビル・マーレイがすると恋愛コメディ哲学映画になるという味付けの仕方によってこうも変わるかという代物。この映画はその味付けが、嫌さ加減は少なく、笑いもあり、甘さもたっぷりで、しかも奥深いモノになっていて、非常に良く出来ていて、楽しくも唸る様な映画。
展開や編集も上手く、急なやり直しも映画的で、コメディとしても笑いを誘うし、映画のテイク2を見せている様なメタフィクション感も見せている。制作陣、役者や編集もちょっと混乱したのではないかと思ってもみたり出来る。
また、原題にもなっているGroundhog Dayという祭りが題材になっているのも、この祭り自体が結構変わっているけれど一風変わっている。このグランドホッグ(劇中ではウッドチャック)が巣穴から出る時晴れていて自分の影を見るとまだ冬が続き、曇っていて影を見ないと春間近という民間伝承で、こんな不思議な行事をしているのも知らず。まあ日本でも各地に不思議な祭りや豊作の占い行事とかあるのと同じか。で、なぜこのグラウンドホッグデーの一日が繰り返すのかと疑問に思っていたが、悟ったビル・マーレイのインタビューで納得。なるほど、上手い舞台を見つけたモノだと。でも、結局そこからの解放の理由は何だったのかは良く分からず。

ビル・マーレイって外れが無いと言うか、出て来るだけで自分の雰囲気に全部持って行くので、見ていて楽しくなるし、この映画でも更に人の行きつく先、行き着きたい先を気持ち良く演じていて、ビル・マーレイははしゃぐ訳でも無く抑え気味なのに活き活きとしている。
ビル・マーレイが出ているから、それに加えて面白味が無く台無しにする感じの邦題「恋はデジャ・ブ」で恋愛コメディかと思いきや、そうではあるけれども人の求める先、ニーチェ的に言えば超人への理想、仏教的に言えば悟りへの道、的なモノを見せられるとは思いもしなかった。なかなか良い映画。

☆☆☆☆★

あと、気になったのは、劇中で「レッスルマニア」のチケットをあげる場面があるのだけれど、この映画の公開年1993年では2月2日の時点でレッスルマニアのチケットって結構簡単に素早く手に入る物だったのかと、どこまで本当かは分からないけれど関心。

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