燃えよデブゴン7 鉄の復讐拳
2026年09月29日 火曜日ユエン・ウーピン監督、サモ・ハン・キンポー主演・武術指導の1979年の香港映画「燃えよデブゴン7 鉄の復讐拳(林世榮 The Magnificent Butcher)」
肉屋として働きながらウォン・フェイフォンの弟子として武術の修行もしているウィンは慌てて話を良く聞かずに泥棒だと思って殴りまくっておじさんに怪我をさせてしまった。
そのおじさんはウォン・フェイフォンと敵対する五龍堂に駆け込み、五龍堂の師範のコウに苦情を申し立てた。
怒ったコウはウォン・フェイフォンの下に乗り込んで来て一悶着が起きてしまい、二度と騒ぎを起こすなとウィンは厳重注意されてしまった。
そこに長年、兄と会っていないウィンの弟が妻を連れてウィンを探して会いに来るが、コウの息子ホイがウィンの弟を騙して妻をさらってしまった。
怒ったウィンの弟がホイを一方的に攻撃している所にウィンがやって来て事情を知らないウィンはホイを助け、そこにホイがつけ込んでウィンを自分の味方として引き付けてしまう。
何処からともなく謎の酒飲み老人が現れてウィンの弟を助けて事情を知り酒飲み老人とウィンが戦う事になるが、お互いの素性を知ってウィンと弟はやっと兄弟だと分かって和睦。
ホイの下から妻を助け出すが、その時妻と一緒にいたコウの養女も連れ出し、その養女を狙ったホイがウィンの家で誤って養女を殺してしまった為にウィンが人殺しの濡れ衣を着させられてしまう。
自分の娘を殺したと思ったコウはウィンの命で償わせようと門下の者達と一緒にウィンの命を狙い始めた。
古い香港映画を見る流行が来ていて、その中でサモ・ハン・キンポーの映画を古い順に見ようと思い調べていたら、配信の中にデブゴンシリーズの「デブゴン10」と「デブゴン7」があったので、これだけシリーズが続いているなら順番に見て行った方が良いのかと思って調べたら、映画「燃えよデブゴン」が当たったので、それ以降のサモ・ハン・キンポーの映画は何も関連性も無いのに邦題を勝手に「デブゴン」と付けて行ったそうなので、関係が無いならという事で製作年代が古い方から「燃えよデブゴン10 友情拳」を見たので次にこの映画も見た。
やはり「燃えよデブゴン10 友情拳」とは全く関連の無い映画。
とぼけたサモ・ハン・キンポーが主役の、しかも以前に見た「スカイホーク 鷹拳」に続き、ウォン・フェイフォンを題材にした映画の中で一番初めに作られた1949年の映画「黃飛鴻傳」でウォン・フェイフォンを演じ、それ以降七十作以上もの映画でウォン・フェイフォンを演じて来たクワン・タッヒンがウォン・フェイフォンを演じ、そのウォン・フェイフォンの弟子をサモ・ハン・キンポーが演じる既視感のある設定であったけれど当然話は違い、前半はサモ・ハン・キンポーのコメディ色が強い明るい話ではあったのに後半になると急に陰惨になって最終的には何じゃそりゃ?な所で終わってしまう、急に方向性が変わる如何にも当時の香港映画な感じで大分いまいち。
序盤から皆が話をせずに、相手の話を聞かずに直ぐに力に訴えようとするし、誰も説明をしようとしないので皆が勘違いや思い違い、意図を持って嘘を付く人の意図通りになるよなぁ…な展開。
これがサモ・ハン・キンポーのコメディとしてならすれ違いコントとして見られるんだけれど、終盤になると以前のサモ・ハン・キンポーの映画でもあった、敵が強姦しようとして殺してしまうという不快な展開になり、笑い要員の一員でもあった弟も殺されてしまい、何故か陰惨な話になって楽しめはしない。
終盤でも違う相手に罪を擦り付けたり、犯人が分かって詳しく説明せずに戦い始めるので、最後の方はこの勘違い、すれ違い、もういいぜと思ってしまった。
逆に終始この勘違い、すれ違いで話を押し進めて行き続けたのは凄いかも。
この勘違い、すれ違いはカンフーを見せる為にはしょうがなく、そうしないと戦いが始まらないからではあるのだけれど、その分戦いの場面は多くなり、色んな拳法を見せて飽きさせない様にはしているけれど基本的には戦っている二人を横から撮っている構図ばかりで、しかも一戦いが結構長目なので段々と飽きてしまった。
そんな中で一番おもしろかったのが、初めのウォン・フェイフォン対敵の師範の文字を書きながらの攻防だった。
お互いに筆を持って文字を書きながらの攻防が目的が殺し合いではなく四文字熟語を完成させる事という目新しさもあって見入ったし、クワン・タッヒンは途中に替えの人が入りつつもこの時七十四歳とは思えないキビキビとした動きで素晴らしかった。
ただ、クワン・タッヒンは流石にこの歳からか特別客演位の少しだけの出演で、クワン・タッヒンの見せ場はここ位。
サモ・ハン・キンポーが主役ではあるけれど周りの人達も濃く、サモ・ハン・キンポーと同じくデブゴンの弟も動きや受けが良いし、謎の酒飲み老人も太っているけれど動けるしでデブゴン達が活躍する。
更にユン・ピョウもウォン・フェイフォンの弟子役で出ているけれど、ユン・ピョウの出番も少しだけ。
勘違い、すれ違いは説明しない事が原因なんだけれど、他にもそもそもの所の説明がほぼなく、サモ・ハン・キンポーの主人公は肉屋と言っているけれど関係する話は初めの一笑いの場面位で肉屋である必要性が無く、何で肉屋なのにウォン・フェイフォンの所で修行しているのかの話は無いし、五龍堂の師範は何でウォン・フェイフォンを目の敵にしているのか分からないし、そもそもこの師範は悪い人ではなさそうなんだけれどそこら辺も何も描かないので分からないし、息子のホイが帰って来ると急に知らない養女がいる事に対する説明は無く、どういった関係性で養子にしたのかは全く分からず、この養女もホイの悪行を目撃しているのに師範に訴えに行く様子が無く、師範と養女の関係がよく分からず、分からない事だらけ。
「もうそういう事」「グダグダした説明はいいだろ!」とぶん投げている、如何にも古い香港映画。
ホイは武術家の息子なはずなのに特に武術は強くないみたいで、一番の諸悪の根源の敵であるはずなのにサモ・ハン・キンポーはあっさり殺してしまい、最後の戦いはサモ・ハン・キンポーと父親の師範になるのが何だか違和感はあるものの、最後の見せ場でカンフーを見せる為にはそんなだろうと思いつつも、最終的に師範は殺さず、そこにウォン・フェイフォンが帰って来て壊されたので新たに設置した道場の看板が反対でウォン・フェイフォンに怒られてめでたしめでたし…って、酷い終わり方。
本当ならこの後ウォン・フェイフォンを入れてサモ・ハン・キンポーと師範の話し合いになるだろうと思うけれど、それだとどちらも後悔と懺悔で泣き崩れるだけで、到底めでたしめでたしにはならなくなってしまうか。
今までの話なんかどうでもいいのでとにかく笑いとして無理矢理終わらせただけの、これもとにかくめでたしめでたしの感じで急に終わる当時の香港映画の典型か。
この映画、初めのウォン・フェイフォンの格闘書道はおもしろかったけれど、その後のカンフーは多種多様でおもしろくはあるけれど長目なので飽きが来たし、話は勘違い、すれ違いの連続でこねくり回していて段々何だかよく分からなくなって来るのに最後は強引だしで、物語はカンフーを見せる為の振りや展開でしかないこの時代の香港カンフー映画ではあるので、まあ話を見る映画ではないのだろう映画でした。
☆☆★★★