電送人間
2021年05月15日 土曜日福田純監督、円谷英二特技監督、鶴田浩二主演の1960年の日本映画「電送人間」
変身人間シリーズの二作目。
遊園地のお化け屋敷で銃剣を使った殺人が起こったが、目撃者達は犯人が突然現れたと言う。
被害者は認識表を持っていた事が分かり、太平洋戦争終戦時に被害者と同じ部隊にいた人達にも認識表が送り付けられていた。
事件を追う新聞記者の桐岡勝は大学時代に同級生だった刑事の小林と共に被害者の関係者を追うと、その人の前に謎の男が現れ殺害。
桐岡と小林が生き残った人物に迫ると、彼らは戦時中に電送装置を開発していた仁木博士をかくまうついでに騙し取った軍の金塊を隠そうとした事が仲間の須藤兵長にバレてしまい、仁木博士と須藤を洞窟に生き埋めにした事を告白し、連続する殺人は死んでいなかった須藤によるものだと言う。
桐岡と警察は須藤を探して捕まえようとするが、須藤は電送装置を使って神出鬼没に現れる。
古いSFを見ようと思ってAmazon プライムビデオを検索していたら、もう直ぐ配信終了で出て来た中に「ガス人間第一号」があったので、これを見るならシリーズ一作目からと思い、一作目の「美女と液体人間」を見たので二作目の「電送人間」も見てみた。
電送装置を使って突然現れて殺人を行い何処かへ消えて行くというのは発想はおもしろいし、サスペンスや推理モノとしてもおもしろくなるはずなのにおもしろくはなっておらず、そもそも電送装置が必要無い気がしてならなかった。
電送や転送と言うと、スタートレックシリーズの様な特定のピンポイントの何処でもの場所に人を転送で送り込み、帰る時もその人を転送でそのままそこから回収して、密室でも潜り込めたり、周囲を大勢でどれだけ警戒しても意味無く神出鬼没に現れるからこその電送だと思っているのに、この映画では当時のSFや科学技術的に電送には馬鹿でかい装置が必要で、しかも到着地点でも帰って来る為に同じ馬鹿でかい装置が必要なので、神出鬼没とは言えない大掛かりな下準備が必要。
まず、目的の相手の近くに馬鹿でかい装置を送り付けて保管してもらわないといけない。
装置から目的地の装置に電送されるけれど、その装置から出て目的の相手に辿り着かないといけないので、どうにかして周囲の警備を掻い潜って建物に潜り込まなくてはならない。
帰る時も隠してある装置まで行かないといけず、誰かに見つかれば一目散に走って逃げて辿り着かなくてはならない。
…という手間しかなく、この装置を使う必要ある?
この装置を使う意味が、犯人は遠くにいるのに一瞬でその距離を超えているというアリバイ作りでもあるのだけれど、犯人の須藤は十数年前に死んだとされていて、須藤は別人になりすましているので、そもそもアリバイ作りが必要な気がしないし、被害者達も自分達の過去の犯罪があるので須藤だと気付いても誰にも言えないという事情もあるので犯人側に有利な条件しかなくて電送装置使わなくても出来てしまう設定。
電送人間という発想や設定を先に考えて、それを活かそうとしたら電送人間でもなくて全然良かった話になってしまっていて、脚本的には失敗じゃない?
その他にも、白川由美演じる女性社員が夜の倉庫街を歩いている謎とか、学芸部の新聞記者が堂々と警察の捜査にくっついて行動しているとか、逃げる犯人須藤には警察は誰も追い付けずに銃の弾丸も一発も命中しないとか、あれだけ電気を使いそうな装置の電源は何で何処から取っているのか?とか、仁木博士は研究を続けている様なのにあれだけ巨大な装置を須藤が何度も勝手に使っているのに気付いているのかいないのか、気付いていても興味ないとか、展開の為の都合の良さも一杯。
シリーズを続けて見ておもしろかったのは、変身人間シリーズ一作目の「美女と液体人間」と同じ様な配役と似た展開。
「ゴジラ」の芹沢大助博士役でお馴染み平田昭彦は、またもや殺人事件の捜査の責任者の刑事。
切っ掛け作りの女性に再び白川由美。
他の俳優も「美女と液体人間」から出ている人も多く、電送人間役の中丸忠雄は「美女と液体人間」では脇の刑事の一人から昇進。
警察とは関係の無い部外者が主役で捜査に同行。
警察はとにかく銃をぶっ放すけれど、効かない、当たらない。
殺人は止められず、最終的に液体人間や電送人間が死亡してめでたしめでたし。
二作では監督も脚本家も違うのに似た感じなのはシリーズだからという意図的なのだろうか?
配役では、鶴田浩二って任侠物の印象だけれど、こういうSFにも出たんだとちょっとした驚き。
それに、中丸忠雄は「美女と液体人間」の時から平成ノブシコブシの吉村崇にばかり見えてしまった。
この映画、電送人間の仕組みが分かってしまうと手間の割に電送する必要もないと思えて来てしまい、その一番の軸が無駄だと思ってしまうと最早おもしろくはなくなってしまった。