てんやわんや

2012年10月09日 火曜日

淡島千景が映画初出演の映画「てんやわんや」。始まりの製作者紹介の字幕で丁寧に「入社第一回」と記してあるし。

東京が嫌になり、会社を辞めようとする佐野周二が、社長に使いを頼まれ四国へ行く事に。その四国での異質な文化で戸惑うお話。

始まりからして社員のストライキからなので社会派映画と思いきや、コメディ的な演出が出て来て物凄く掴み難い。その後も社長から渡された謎の小包や、四国独立を策略する和尚が東京の人間を取り込もうとする等、怪しい話を盛り込んだサスペンスかと思いきや、町の人々は抜けた人々と言うか、ほわっとした人々ばかりで、笑わしたいのか何なのか、やっぱり掴み辛い。
四国では選挙等政治絡みの話もありながら、人の家の木を勝手に切ってお礼に切り株に魚を置いておく風習とか、河童に引きずられ馬が河にはまるとか、大きなウナギが誰の物かで喧嘩するとか、それが何かに繋がる訳でも無く、「それ何?」な場面が多かったり、最後まで何が描きたいのかいまいち分からないまま。
凄いのはこの映画の製作年の1950年の都会と田舎の差。東京は白黒映画で見る戦後の都会なので、こんな感じというのは分かるけれど、四国の山奥では長者がいて、行き成り饅頭喰い競争したり、まるで落語の世界みたい。この部分の差異を見せようとする映画なのか。

やっぱり淡島千景は綺麗で可愛い。宝塚歌劇団から映画に転身して、これで第1回ブルーリボン賞演技賞を取ったのも分かる。まだこの時26歳なのに、大人っぽさもありながら、少女的な無邪気さを持ち合わせた、恐るべき魅力。
志村喬も出て来るけれど、物凄い脇役。ただ志村喬と言えば、しょぼくれた哀しい演技の役者の印象が強いけれど、これの志村喬はスケベでアホなおっさんで、こういう演技の方が演技派と思えるし、こっちの方が良い。志村喬のしょぼくれた演技には笑ってしまうからなぁ。
主人公である佐野周二は、周りの役者と役が濃いので、非常に印象が弱い。そんなに演技も上手いと思えないし。
そんな役者陣のやっぱり気になるのは喋り。東京人は今の共通語とも少し違う、江戸弁というか、東京弁的な古い言葉は当時の言葉なんだろうけれど、四国の人達が方言はあるけれど、東京弁が下地の四国弁で何か変な感じ。

都会と田舎の対比の映画なんだけれど、都市部以外も平均化された今では、この映画は昔の日本の田舎に迷い込んだ感じで怖さが先走る。結局「田舎って…」の皮肉だけで、当時の都会の人も田舎の人もお互いに相容れようとしない区別感ばかりで、相互理解なんて夢でしかないと言っていて、物凄い居心地が悪い。これを見て都会の人間が「よし、田舎に行こう。」とは思わない様に田舎を描いている。「可愛い娘と出来るのか。」で行こうと思う人はいるだろうけれど。

☆☆★★★

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