霊幻少林拳

2026年08月19日 水曜日

ラウ・カーリョン監督、ワン・ユー主演の1979年の香港映画「霊幻少林拳(茅山彊屍拳 The Shadow Boxing)」

遠方で死んでしまった人を呪術でキョンシーにして、そのキョンシーを操り、キョンシー自らに歩かせて故郷まで送る事を生業としている道士チェン・ウーと弟子のユエン。
八体のキョンシーを送り届けようとしている所に更に一体の死体が運ばれて来た。
九体のキョンシーを運ぶ事となったチェン・ウーとユエンだったが、そこに結婚したくないから逃げ出して来たユエンの友人フェイフェイが加わる。
賭け事好きのチェン・ウーは宿泊した町の賭博場でいざこざを起こして足を怪我してしまった。
これ以上歩けなくなったチェン・ウーはユエンとフェイフェイにキョンシーを運ばせる事にしたが、キョンシーの中の一体は上司の不正を暴こうとして濡れ衣を着させられて指名手配犯となってしまった役人で、キョンシーに成り済まして検問を切り抜けようとしていた。

何度目かの昔の香港映画に興味が湧いた時期が来たので幾つか古い香港映画を見ていて、リュー・チャーフィーの映画も見ようと思って見た映画。
ただ、この映画、ソフト版だと表紙に大きくリュー・チャーフィーが映っているけれど、映画内では脇役の客演位の位置でリュー・チャーフィーは主演でもない。

この映画は1980年代中頃に映画「霊幻道士」が当たってシリーズ化されたよりも早い時期のキョンシー映画なんだけれども、話は主人公と女友達の関係性の笑いだったり、リュー・チャーフィーの方の揉め事が軸で、キョンシー映画だけれどもキョンシー映画でもない。

初めは道士がどうやって遺体をキョンシーにするかが描かれいるので恐怖映画として見ていたら、道士の師匠が博打ばっかりで中々キョンシーを運ばないので依頼主達が怒っていたり、町の人がキョンシーを怖がりながらも覗きに来たりとキョンシーが結構日常の存在として存在していて、お札が取れても「霊幻道士」の様に襲い暴れたりもせずにピョンピョン跳ねて勝手に何処かに行ってしまう位の暴走なのでキョンシーは怖い存在でもなく、段々と主人公組やリュー・チャーフィーの方の話に行くのでキョンシー自体の存在感が薄くなって行き、キョンシーの恐怖映画、怪奇映画ではなかった。

一方で登場人物達の個性が強く、出来る道士の師匠はとにかく博打が好きで、しかも何故か勝ちまくり、あちこちの賭博場で目を付けられて揉める。
主人公の弟子はまだ修行中の様で、物覚えが悪くて何時も呪術を迷うし、戦う時も誰かに指示されないと動きも出来ない出来なさなんだけれども人当たりの良さがあって可愛らしい主人公。
フェイフェイは結婚が嫌だと言っているけれど、どうやら主人公の事が好きらしく、でも主人公は仲の良い女友達位にしか思っていないのでプリプリしていて可愛らしい人物で、この三人の人物や関係性がおもしろくて、ここで楽しく見れてしまった。

初めの方から登場していたリュー・チャーフィーはずっとキョンシーに成り済ましているのだけれど、キョンシーの生態を分かっていないからなのか、時々キョンシーの通常の動き以外の動きをして主人公に怪しまれるを繰り返す位で特に活躍もしない。
リュー・チャーフィーがキョンシーに成り済ましているという部分ではおもしろいのかもしれないし、やたらとリュー・チャーフィーがハゲキョンシーと言われていじられ続けるのだけれど、リュー・チャーフィー側の話は展開が遅く、リュー・チャーフィーが人間として行動し始めるのが残り三十分位になってから。
そこから急にリュー・チャーフィーのカンフー映画になってしまい、これは何の映画だっけ?と思った頃にちょっとだけキョンシーを出しては来るけれど、やっぱりキョンシーの恐怖映画にするつもりは無かったみたい。

カンフーは、リュー・チャーフィーが鷹爪拳という指を相手に突き刺す様な拳を使ったり、主人公は誰かに「キョンシー跳躍!」「キョンシー回転!」と言われるとキョンシー的な動きで相手と戦うキョンシー拳を使うので、余り見た事の無い戦いが結構おもしろかった。

相変わらずこの時代の香港映画だからなのか、ショウ・ブラザーズの映画だからなのか分からないけれど最後はこれまでの話を補足しないまま終わり、一番の軸になったリュー・チャーフィーの話は結局どうしたのかは描かれず、戦いの時の台詞から、どうやら誰かに上司の罪を報告してめでたしめでたしになったっぽく、主人公とフェイフェイは仲良く一緒にいはしたけれどフェイフェイの結婚の話も主人公との関係も何も言及されないし、師匠は突然道端で子供達と石をかけて賭け事をしていて、最後にはこれだけ石を取った!で喜んでいたので師匠は何かあって壊れてしまったの?だし、それまで色々して来たのに特に話の結末を描かないので大分物足りなかった。

この映画、キョンシー映画、恐怖映画だと思って見たら違う映画で、でも主人公周辺の人間関係の話はおもしろかったし、何故かいじられるリュー・チャーフィーの方の話はもっと分量多くしても良かったのでは?と思うけれど展開としては良かったし、キョンシーを脇の一要素として使っている時々戦いがある道士物として見たら中々おもしろい映画でした。

☆☆☆★★

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