薄桜記
2013年11月13日 水曜日森一生監督、市川雷蔵と勝新太郎共演の1959年の時代劇「薄桜記」。
五味康祐の時代小説「薄桜記」が原作。
決闘の助太刀をする勝新太郎演じる中山安兵衛。それを見た市川雷蔵演じる丹下典膳は面倒に巻き込まれまいとそこから立ち去る。その決闘の中山安兵衛が斬った相手が丹下典膳の同門であり、それを見逃した丹下典膳は師匠から破門にされてしまい、中山安兵衛も道場から離れてしまう。その後、中山安兵衛が惚れた女性が丹下典膳と夫婦になり、中山安兵衛は堀部家へ婿に入る。この二人の哀しい因縁を中心に描いている。
丹下典膳と中山安兵衛の因縁物語なんだけれど、始めは勝新太郎の話が続き、彼が主役であり中心かと思いきや、中盤はずっと市川雷蔵の話が続き、こっちの話が終わったから次はこっちと分断され、二人の因縁を対比的に描くには非常に配分の悪い構成。ここら辺は当時のスター市川雷蔵とまだまだな勝新太郎の扱われ方の差が出てしまっているのだろうけれど、市川雷蔵の方はたっぷり描かれているのに、物語的には対等の相手にならなくてはいけない勝新太郎が物凄く脇役感があってしまうのは痛い所。最後まで勝新太郎は脇役。最後まで見ると市川雷蔵と真城千都世の恋愛劇が全てで、勝新太郎は二人の引き立て役でしかない。最初の勝新太郎の扱いから思ってしまう話とはドンドンずれて行った感じ。
話的には、江戸時代の武士は面倒臭い上に頭がおかしいと思うばかり。常に面目が一番で、それが通らなければ刀で殺し合い。馬鹿な上に野蛮。
それと、この映画の難点は録音があんまりよくないと言うか酷い所。普通の台詞は声が小さくて、モゴモゴと何を言っているのか聞き取り辛い。ただでさえ時代劇の侍口調で何を話しているのか理解し難い部分があるのに、音量を最大にしてもまだ声が小さく聞き取り辛くて、話を追う事さえ結構難しい。しかし一方で、流れる音楽や騒いだ時の声は急に大きくなり過ぎて、やたらと音量を調整しながら見ていた。
最後の市川雷蔵が転がりながらのチャンバラは斬新過ぎるし、映像的にも良い。ただ、転がって動きづらかったり、逃げ難いのに次々と何人も斬って行くと、敵が弱過ぎ、間抜け過ぎに見えてしまうという逆効果な部分があるけれど。
話は避け難い二人の因縁の中に恋愛を交え、哀しく描いていておもしくはあるのだけれど、二人をそれぞれ一人ずつまとめて見せるので脚本の構成が拙い感じがしてしまうし、何より録音の悪さで何言っているのかの聞き取り辛さがまず先に来てしまい、見ているのが面倒臭くなってしまう。話は悪くないけれど、出来が悪い。録音さえ良ければもっと見れた映画。
☆☆★★★