無法松の一生

2012年03月29日 木曜日

監督稲垣浩、主演三船敏郎の1958年の映画「無法松の一生」。

非常に爽快で楽しいし、切なくもあり、とても良い映画。
やはりこの映画の一番の見所である主人公の無法松こと松五郎の、無茶をし、口が悪く、喧嘩っぱやいけれど竹を割った様な性格と、人情深い人の好さを持ち合わせ、何時しか人に気に入られるという人物に、笑わされ、泣かされ、見ているこちらも惹きつけて離さない。ちょっと邪険に扱われたからって、芝居小屋に鍋持ち込んでニンニク焚いてからの喧嘩とか、若者らの決闘に殴り込んで暴れまくるおっさんとかは爆笑。一方で、皆を裏切る事だと知って打ち明けられない想いと、題名からも分かるその切な過ぎる結末。楽しい心地良さと、哀しみの心地良さを見せる素晴らしい映画。
その松五郎を演じる三船敏郎が何と言っても良い。何時もの元気過ぎる三船が演技的にも暴れ、大いに興奮と笑いを誘う。初めの若い頃の口が悪く、喧嘩っぱやいけれど良い人というのは、まるで「こち亀」の両さん。角刈り、濃い眉と見た目が本当に両さん。両さんの元ネタはこの三船敏郎じゃあないかと思う位。
奥さんの高峰秀子も品の良い女性の感じが良く出て、しかも子想いの母親の顔も見せ、惚れてしまう女性も分かる演技。
息子のぼんぼん、芥川比呂志も、あの小さい子が素直に大きくなったままの様でこちらも良い。
この映画に登場する人物は皆、基本的に良い人、気持ちの良い人なので、見ていてもずっと気持ちの良いまま。
全体的に良いのだけれど、ただ一つ、最後のひつこい程のネガを使った心象風景は少々あざとく、冷めてしまった。

1958年の制作なので、まだ昭和の建物や道具等が残っていただろうし、建物も明治の雰囲気を出していて、今だとこんな雰囲気の残り香がある様な映画は出来ないんだろうなぁと変に哀しくなった。

この映画は1943年にも監督稲垣浩で作られたけれど、戦時中の検閲で松五郎が想いを打ち明ける場面がカットされ、そのカットを保留し後々公開する事も出来たのに、会社側の意向で不本意な形で公開となった為に、再び稲垣浩自身が作り直したと言う執念の作品でもあり、大いに笑って、泣ける、非常に素晴らしい映画になっている。

☆☆☆☆★

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