蛇鶴八拳

2025年11月23日 日曜日

チェン・チーホワ監督、ジャッキー・チェン主演の1978年の香港映画「蛇鶴八拳(蛇鶴八歩 Snake & Crane Arts Of Shaolin)」

少林寺八流派の師範達が集まって最強の拳法として蛇鶴八拳を作り出した。
蛇鶴八拳を伝承した者は技の極意を記した秘伝書と九龍令と言う矛が与えられて八流派の頂点に立ち、全ての門徒達を率いる事が出来るとされた。
しかし、蛇鶴八拳を作り出した八流派の師範達が突如として全員が失踪してしまった。
各八流派が秘伝書探しに躍起になっている所に秘伝書を持つシー・インフォンが現れた事で各八流派達がシー・インフォンを襲い始め、更には各八流派同志が対立し殺し合いを始めた。

Amazon プライムビデオでジャッキー・チェンの映画が多く配信終了になるので見ていない古い映画をと思い見た映画。

ジャッキー・チェン演じる秘伝書を持つ主人公が秘伝書を狙う様々な流派から次々と襲われて行くという分かりやすい設定から、その流派同志でも自分達が覇権を握ろうと戦い出すという構成がおもしろくなり、その登場人物達皆が結構個性が立ち、それぞれで秘伝書入手の為の策略を巡らせて、それぞれが対立協力しながら行動するという複雑な構成になっていて、この人は次はどうするの?でおもしろく見れてしまった。

主人公が初めに会った小僧とのバディモノになるのかと思いきや、その小僧も秘伝書を狙う流派の娘で対立したり、現れた武術者が主人公を助ける良い人かと思いきやちゃんと裏切って敵側に付いたり、初めは秘伝書狙いだったけれど負けたのであっさり手助けしつつも秘伝書狙う人とか、主人公を殺そうとまでした流派の頭領が最後は手助けしてくれた事で敵に勝てたりとか、この人間模様が結構良く出て来て見ていても飽きなかった。

ただ、流石に二時間弱の長さでは登場人物が多く、裏切ったり手助けしたりと繰り返すのでどの人も描きは物足りず、この人物の背景やここの関係性をもっと描くともっとおもしろくなるのに…という所が一杯。
これだけおもしろくなりそう、膨らみそうな要素を描くには流石に時間が足りていない。
見ながら「この八流派をきちんと全部出し、その各流派の中の人々も多く出して人間関係を描き、主人公を中心に流派同志の対立や徒党を描きつつ、全員が良い人でもあり悪い人もでありで描いて、主人公の恋愛にも発展しそうな男女関係も描いて、主人公が戦って行く話」を妄想してしまい、こうなると長編の連続ドラマ向きの題材で、やっぱりこれらの要素は映画一本では物足りなさがあった。

戦いはジャッキー・チェンの初期ではあるけれど各流派はそれぞれ違う拳法や武器を使って個性を出していたし、ジャッキー・チェンも後によく見る室内でそこら辺にある日用品を使って戦うのも出て来たしで中々おもしろかった。
特に最後の敵の首領の拳法が構えたまま動かず、動くと力強くてカッコ良過ぎ。
見ていても主人公のはずのジャッキー・チェンよりも首領のカム・コンの方が圧倒的に存在感があったし。
更にその最後の戦いは一対一の戦いのはずだったのに急に現れた笠の三人組との戦いになったけれど、この三人組がカッコ良過ぎ。
両端刃の槍で戦うのだけれど一々の決め姿と言い、槍での攻撃と言い、やっぱりジャッキー・チェンよりも見てしまった。

そう言えば、映画の始まりでジャッキー・チェンが何も無い所で武術披露していたけれど、あれは結局何だったのだろう?
別に蛇鶴八拳の習得とは関係無さそうだし、掴みの一幕だっただけ?
その場面を見たら、もしかしたらリー・リンチェイ(ジェット・リー)の映画「少林寺」でそれまでの話とは余り関係無く登場するリー・リンチェイの武術披露って、これに影響を受けていたんだろうか?なんて思った。

それと、ちょうどこの映画を見る前に見た映画「成龍拳」と同じ撮影地が多く登場していた。
道脇に何かの像が立っている寺?とか、師範が隠れていた滝のある場所とか、途中の茶屋は「成龍拳」でそのまま出て来ていたし、この映画の前に制作されたのが「成龍拳」なので、撮影費用もあってか一気に同じ場所で別の映画も撮影したのかしらん。

この映画、分かりやすい敵対構図から登場人物が多く登場して複雑な関係性になって行っておもしろい話ではあるんだけれど、如何せん決められた時間内では描きが薄くなってしまい、色々とおもしろくなる要素が沢山あった分だけ非常に勿体無い気がしてしまいました。

☆☆☆★★

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