北北西に進路を取れ
2015年07月25日 土曜日アルフレッド・ヒッチコック製作・監督、ケーリー・グラント主演の1959年の映画「北北西に進路を取れ(North by Northwest)」。
広告会社員のロジャー・ソーンヒルは、突然見知らぬ男達に拳銃を突き付けられ豪邸に住む男の元へ連れて行かれる。男はロジャー・ソーンヒルに「正体は分かっている、ジェームス・キャプラン。私を手伝え」と言って来るが、何の事か分からないロジャー・ソーンヒルは拒否。すると、無理矢理酒を飲まされ、交通事故に見せかけられて殺されそうになる。警察に事情を説明し、男を調べてもらうが、ロジャー・ソーンヒルの主張が嘘の様に見せかけられ、更には殺人事件の犯人にまでされてしまう。
勘違いされた男の巻き込まれ型サスペンスで、前半の訳の分からないまま自分が何かに引きずり込まされ、更には犯人として逃げ回りながらも謎の男ジェームス・キャプランを探し、追い駆け始める部分は非常におもしろく、「どう持って行くの?」のワクワク感でグイグイ引き込まれる。…だけれど、主人公を助けるエヴァ・マリー・セイント演じるイヴ・ケンドールが現れると急に恋愛モノになり始め、今までの良い流れで来たサスペンスがつまづく様にまったりしてしまい、その後の敵の性急さから間抜けさに感じてしまう展開等、どうにもつまらなくなってしまう。
殺人犯とされて逃げているケーリー・グラントが、「退屈している。あなたカッコ良いから…」と言う理由で怪しさしかない女性を簡単に信じてしまい、ケーリー・グラントって、この時点で55歳で、そんな十分なおっさんがまだ20代中盤の女性に男前と言われて「だからか…」と納得するアホさ加減と、その自信過剰さがどうにも脚本の都合を感じてしまう展開で、まず少し離れてしまう。このケーリー・グラントの性格は二度の離婚をしているという理由が出ては来るけれど、それは最終盤なのでずっと引っ掛かるし。
役の年齢も多分まだ若いという設定なんだろうけれど、主人公の母親が登場した時、どう見てもケーリー・グラントの方が老けて見えてしまい、「え?家庭事情が複雑で、義母?」と思っても特に何も説明が無い。単に普通の親子なんだろうけれど、母親を演じているジェシー・ロイス・ランディスがこの時点で63歳でケーリー・グラントと8歳しか違わず、どう見てもケーリー・グラントの配役が失敗している。
エヴァ・マリー・セイントは見ていても「誰にどうしたいの?」という思いは、最後に中年のおっさん好きの普通の女性と分かって何となくは納得するのだけれど、ケーリー・グラントが一目で惚れる様な程の美人ではなく、終始何でケーリー・グラントがこの女性に惚れているのかが納得出来ず、やっぱり配役が不味い。
敵側も、始めは物凄く直接的にケーリー・グラントを殺そうとしているのに、中盤になると荒野で飛行機で襲撃して殺そうとする様な、急に消極的、回りくどいやり方を始め、しかもあれだけ「自分は違う!」と否定していたのに、急に交渉して来ても怪しくも思わないとか、徐々に頭の悪さや間抜けが出て来てしまい「あれれ?」感ばかり。
それに展開が、次々転がって行く導入から段々とまったりして行き、尺稼ぎの様な手間取った間延びする遅さに変わって、最後も全然盛り上がりに欠けたまま、「新婚夫婦が乗った列車がトンネルに入って行く」という変な下ネタの笑いで終わらすし、中盤以降の流れが良くない。
一番大事なジェームス・キャプランの正体も結構早い段階で明かしてしまい、「あれ?これ、もうバラして良いの?主人公が追って行くサスペンスの面白味が激減しないの?」と思ったけれど、バラしが早かったのでそれ以後の間延び感の原因にもなっていたと思うし。
あと、この題名が良く分からない。北北西なら「North-northwest」なのに「North by Northwest」って、終盤の「ノースウェスト航空の飛行機に乗って北に行く」と言う事なの?その邦題「北北西に進路を取れ」も意味が更に不明だし。要は、映画の題材が何だか分からないから、題名もあやふやにしたって事なんだろうか?
この映画、訳の分からない状況に追い込まれたという設定と前半はおもしろかったのに、中盤以降のサスペンス度合いが減ってまったりする感じがどうにもおもしろく感じられなかった。
この設定で今に作り直したらもっと早く展開し、バリバリのサスペンスになるんだろうけれど、今すると変にこねくり回したり、とにかく派手な場面を作るために無茶したりと、それはそれで問題点の多い映画になりそうで、後年見ても上手い所に持って行くって難しいんだろうなぁ。
☆☆★★★